抄録
毎年,数百万件の農薬中毒症例が発生し,公衆衛生上の問題となっている.さらに,農村部では農薬中毒が自殺法として選ばれる傾向にある.有機リン系殺虫剤中毒の治療のための酵素の使用は数十年前に提案されている.いくつかの酵素は,殺虫剤や神経毒のような有機リン系化合物を変換することができる.そのため,直接的な酵素注入,リポソームおよび赤血球担体,PEG化調製物および体外酵素処理といった特別な酵素処理がこれまで提案されている.しかし,酵素処理法は利用可能な状態ではない.本総説では,有機リン系殺虫剤中毒の治療を目的とする酵素の使用を批判的にまとめ,残された課題について議論する.(文責:編集事務局)