抄録
イネ葉鞘上で生育するイネ紋枯病菌 (Rhizoctonia solani) のを浸透性殺菌剤フルトラニルで処理すると, 菌糸生育阻害および菌糸・侵入菌糸塊 (IC) の崩壊などの形態変化が起こる. 処理6時間後に観察された細胞の超微細構造の変化は細胞質の密度低下および細胞膜の陥入であり, 崩壊に浸透圧ショックが関連していることが示唆された. 無処理区のICにはコハク酸脱水素酵素群 (SDC) 活性が組織化学的に in situ で検出された. SDC活性はフルトラニル2μg/mlの処理1時間後に, 完全に阻害された. 培養菌体中のATPレベルは, フルトラニル2μg/mlの処理から2時間後には減少していることが酵素学的検出によって明らかになった. これらの結果から, R. solani へのフルトラニル処理によるSDC活性阻害はATP欠乏を引き起こし, それが細胞質密度の低下, 細胞内膨圧の減少を経て細胞の崩壊に至ることが推論された.