有機リン剤およびそのオキソン体のフォスファチジルコリンより成る多重層リポソームへの分配は, 化合物の疎水性とともに増大し, さらに温度上昇にともなう膜の相転移前後で大きく変化することがわかった. また, アシル鎖への二重結合の導入ならびに鎖長の減少による膜流動性の上昇によって膜への分配が高まったが, 膜表面への電荷の付与は分配を抑制した. 分配性試験の結果に加え二種の蛍光プローブの蛍光偏光強度に与える影響から, P=S結合を有する化合物群は脂質二重層のアシル鎖が形成する疎水性領域に, またオキソン体は膜表面に近いグリセロール骨格付近の親水性領域に分布することが推定された.