1983 年 8 巻 3 号 p. 353-355
ヒト胎児肺2倍体細胞 (HEL 299) の単層培養を殺虫剤 carbaryl を含む培地で培養し, 細胞の核酸およびタンパク質生合成に対する影響を調べたところ, DNA, RNAおよびタンパク質生合成のそれぞれに対するこの殺虫剤の効果には有意の差は見いだされなかった. 10-3Mの濃度で, これら高分子生合成はいずれも強く阻害されたが, 10-7M~10-5Mのより低い濃度ではこれらの生合成はあまり影響を受けなかった. すでに著者らは carbaryl がこの細胞のタンパク質に強く結合することを報告しているが [Bull. Environ. Contam. Toxicol. 28, 500 (1982)], この結合から由来することが予想される carbaryl の毒性機構としては, 生体高分子生合成阻害以外の機構を検討しなければならない.