1984 年 9 巻 3 号 p. 497-501
Methyl N-(3, 5-dichlorophenyl) carbamate (MDPC)は, 10μg/mlでベンズイミダゾール耐性灰色かび病菌の胞子発芽を抑制しなかったが, 発芽管の形態異常を引き起こした. この異常形態は, 野性菌に methyl benzimidazol-2-yl carbamate (MBC) を処理した場合の異常形態に酷似していた. さらに, MDPCは耐性菌の有糸核分裂を, MBCが感受性菌の有糸核分裂を阻害するのと同様に, 阻害した. 一方, MDPCを野性菌に, また, MBCを耐性菌に処理した場合, 菌の形態異常および有糸核分裂の阻害はまったく認められなかった. MDPCとともに耐性菌または野性菌の液体培養液をインキュベートした場合, 代謝物はまったく検出されず, 菌体への薬剤の集積程度も両菌間で大差がなかった. したがって, MDPCの耐性菌に対する選択的抗菌力は, 薬剤の解毒, 活性化または菌体への選択的集積に原因するものではないと思われた.