抄録
本研究は化学プラント機器用工業潤滑油のメンテナンスを目的とした探索的研究である。その主目的は潤滑油の状態分析を通して適切な潤滑油管理を行って潤滑油の寿命を延ばすことである。潤滑油劣化要因の一つとして基油の自動酸化に注目した。また,自動酸化の進行に伴う潤滑油の物理的性質と化学的性質の変化および反応機構を考慮して系中に残存する酸化防止剤とその機能の重要性に注目した。そこで,酸化防止剤の劣化や消耗を診断するための新たな指標が必要となった。酸化防止剤が消耗すると,炭化水素の自動酸化反応初期段階で生成する活性な有機過酸化物が生じる。これはヨウ素還元滴定で定量できる。我々は潤滑油の状態分析のパラメーターとして新たに過酸化物価(POV)を提案し,その有用性を実験室内のモデル酸化試験で示した。これにより,潤滑油中のPOVが上昇する前に酸化防止剤を分割して添加することで潤滑油の長寿命化に有効であることが分かった。次に,化学プラントで実働している圧縮機の潤滑油を2年間にわたって追跡調査した。機械の運転条件次第でPOVは上昇し,その挙動は全酸価の上昇と関連する。POVが実機に使用している潤滑油の劣化を早期に診断するパラメーターとなりうることを示した。