代表的なアパタイト化合物であるハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)は骨や歯の主な構成成分であり,生成しやすく,構造安定性が高く,有機物質との親和性が高い無機物質である。加えて,構成元素のCaをSrやPbで置換,PをVで置換,およびその組成比(Ca/P)を1.5~1.7の範囲で変えられる。そこで,我々は様々な元素の種類や組成比を有する結晶性の高いアパタイト化合物微粒子を水熱法により合成し,目的の反応に応じて表面酸塩基性を最適に調整したアパタイト触媒の開発を目指した。バイオマスから得られる代表的な低分子化合物であるエタノールと乳酸の化学変換に対して,それぞれ優れた触媒特性を示すことを明らかとした。エタノール変換に対しては,構成元素によって生成物選択性が大きく異なること,1-ブタノール選択性ではSr/P比の高いSr–Pアパタイトが優れていることを見出した。このSr–Pアパタイト触媒は,適度な酸塩基触媒活性および不飽和吸着種への水素添加活性を有することを明らかとした。一方,乳酸変換に対してはCa–Pアパタイトが約80 %の高いアクリル酸収率を示すことを見出した。特に,一部のCaイオンをNaイオンで置換することでアクリル酸収率が飛躍的に向上した。Na導入による触媒表面の酸性サイト(副生成物のアセトアルデヒド選択性)の減少が主因であり,また過剰なNaイオン添加は塩基性サイトにより活性劣化が促進されるため,アパタイト構造の化学量論組成比に対して過不足なくCaサイトをNaイオンで置換することで,高いアクリル酸収率と活性劣化の抑制を可能とした。

水中で存在するHg2+とモデル吸着剤表面の酸性官能基との吸着前後のエネルギー差をDFT計算によって求めた。DFT計算から,アルコキシ基,エーテル基,カルボニル基,カルボキシ基の4種類の官能基のうち,カルボキシ基が最もHg2+種と親和性が高いことが分かった。カルボキシ基を選択的に導入したSiO2(SiO2–COOH)のHg2+吸着量はpH 5~7で顕著に増加した。SiO2–COOHの水中でのゼータ電位のpH依存性から,ゼータ電位はpH 5付近でほぼ0となり,静電的な影響が現れないpHの領域でカルボキシ基の効果が認められることが分かった。この結果はDFT計算の結果とよく一致した。

低塩分濃度水攻法(LSWF)は持続可能な石油増進回収法として登場し,ぬれ性変化がその主要なメカニズムとされている。しかし,そのぬれ性変化は初期飽和水存在下における油成分の初期吸着構造の影響を受けるが,この影響の背後にあるメカニズムは未解明のままである。本研究では,有機酸単分子層の初期吸着構造がぬれ性変化にどのように影響するかについて調査する。初期飽和水存在下で白雲母上にCa架橋したステアリン酸(SA)の単分子層を形成させることで貯留岩鉱物の初期表面状態を模倣し,原子間力顕微鏡(AFM)を用いてその単分子層構造を評価した。続いて,n-デカン中で塩分濃度とpHが異なるNaCl水溶液の液滴の接触角を測定した。AFMにより,Ca2+とSAの濃度が高ければほぼ連続した単分子層が形成されるのに対し,濃度が低ければSA単分子層が斑状または島状になることが確認された。また,接触角測定の結果,斑状の吸着構造ではLSWがSA単分子膜下の水膜に容易にアクセスできる経路が多く存在するため,LSWの効果が顕著になることが示された。さらに,pHはSA単分子膜の安定性を支配すること,すなわちpH 2におけるカルボン酸のプロトン化はSAの脱着を引き起こすことが分かった。これらの知見は,LSWによって引き起こされるぬれ性の変化がpHと鉱物表面に吸着された有機酸の層の下にある初期飽和水への界面経路の相乗効果によって引き起こされることを強調しており,LSWFの基本的かつ微視的なメカニズムを示している。

未利用資源の有効活用の観点から,これまでゼオライトおよびその類縁化合物の合成においてほとんど使用されてこなかった結晶性石英や石英ガラス端材を用いたMFI型シリカライトの合成が行われている。結晶性石英を一度高濃度の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱溶解処理することでMFI型シリカライトの合成ができることが分かっている。本研究では,石英からのMFI型シリカライトの生成においてゲルおよび母液中のシラノール量がどのような影響を与えるかについて分散分析および重回帰分析を用いて検討した。その結果,ゲルにおいては表面シラノール量が多いほど,母液においては溶解している単量体ケイ酸イオンの割合(シラノール量に対応)が多いほどMFI型シリカライトの結晶化度が低くなることが分かった。さらに,ゲルと母液の間に相互作用が存在し,これはMFI型シリカライトの結晶化度に正の影響を与えることが分かった。
