Journal of the Japan Petroleum Institute
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一般論文
フラボノイドの化学構造と酸化防止機能の関係
大勝 靖一桜井 隆佐藤 琢磨
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2010 年 53 巻 4 号 p. 213-221

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抄録

高酸化防止性能および食品安全性を有するプラスチック食品包装材製造の可能性を探る目的で,フラボノイド類の酸化防止活性(光酸化防止活性を含む)を基礎的に,かつ動力学的に検討した。二つの芳香族環をもつカルコンは,その後続の代謝過程での閉環によりもう一つの環構造を得てフラボン(ナリンゲニン)に変化するが,このときその酸化防止活性は著しく低下する。しかし,さらなる代謝の進行につれて,ナリンゲニンは種々のフラボノイド類へ変化し,徐々にカルコンに匹敵し,最終的にはそれより高い酸化防止活性を獲得する。すなわち,植物は再び向上した酸化防止,特に光酸化防止活性を得ることができる。一般に,フラボノイドは植物中に1~10 mmol/dm3の濃度で存在する。代謝物の最も高い酸化防止活性を持つケルセチンは,0.5 mmol/dm3の濃度において有害なUVからほとんど完全に植物を保護することが分かった。チロシンまたはフェニルアラニンからフラボノイドへの複雑な代謝過程は,一部植物がUVの損傷を受けないで安全に光合成を行うために必要なのであろう。さらに,そのようなフラボノイドは,石油化学から作られる食品包装材における生体への安全性の安定化に有用であることが期待される。

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© 2010 公益社団法人石油学会
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