2016 年 59 巻 6 号 p. 317-321
産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ, AIST)では,バイオディーゼル燃料(B100)中成分分析などの精度管理用認証標準物質,NMIJ CRM 8302-aの開発を行った。本認証標準物質は,パーム油由来の脂肪酸メチルエステルであり,認証項目は水,6種類の元素(S,Na,K,Mg,Ca,P),密度および動粘度である。本論文では,バイオディーゼル燃料認証標準物質中の硫黄の精確な値付けについて述べる。硫黄の値付けには,誘導結合プラズマ質量分析法と燃焼─イオンクロマトグラフィーを用いた。誘導結合プラズマ質量分析法では,試料の前処理に3種類の方法を採用した。燃焼─イオンクロマトグラフィーによる硫黄定量法の妥当性確認は,硫黄の認証値が付与されている3種類の認証標準物質(NIST SRM 2773,NIST SRM 2298,NIST SRM 229)を用いて行った。硫黄の認証値は,4種類の手法で得られた測定値を重み付けして平均することで決定した。