2018 年 61 巻 4 号 p. 205-212
含浸法により調製したCu/SiO2,ZnO/SiO2を触媒とし,気相でのエタノールの脱水素によるアセトアルデヒド合成を検討した。触媒は,XRD,窒素吸脱着解析,N2Oパルス法,CO2-とC2H5OH-TPDにより解析した。Cu/SiO2触媒の調製にあたり,銅アンミン錯体を使用することで,SiO2上のCu粒子径はXRDで検出されないくらい小さくなった。このようにして調製したCu/SiO2触媒は,エタノールの脱水素によるアセトアルデヒド合成において高い活性,選択性を示した。しかしながら,Cu/SiO2触媒は,350 ℃ではCuのシンタリングのため活性低下が見られた。興味深いことに,金属酸化物触媒であるZnO/SiO2は,本反応に対し中程度の活性と100 %の選択性を示した。さらに,350 ℃において少なくとも6 h,活性,選択性変化は見られなかった。金属触媒Cu/SiO2上と酸化物触媒ZnO/SiO2上での反応経路をC2H5OH-TPDで調べた。50 ℃でCu/SiO2にC2H5OHを接触させると水素の発生が見られ,このことは既にこの温度で脱水素反応が進行することを示唆した。アセトアルデヒドの脱離は200 ℃以上で見られた。一方,ZnO/SiO2では240 ℃以上で水素とアセトアルデヒドの同時脱離が認められ,これはこの温度でのエタノールの解離吸着が律速段階であることを示唆した。このように,金属触媒と酸化物触媒では反応経路が大きく異なっていることが明らかとなった。