2026 年 69 巻 6 号 p. 338-347
石油貯蔵施設における原油スラッジの蓄積は操業・管理上の問題であるが,スラッジ形成機構は十分に解明されていない。本研究では石油備蓄基地の岩盤タンクから採取した原油スラッジを対象に,化学組成および微生物学的特性を包括的に解析した。スラッジは高い全酸価(TAN)とワックス含有量を示し,蛍光X線分析から無機成分としてカルシウム塩が卓越していた。さらに,TG-DTA,FT-IR,熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析により,主要有機成分はナフテン酸カルシウムであることが示唆された。バイオマーカー解析,および微生物群集解析の結果,同スラッジの炭化水素成分は微生物による生分解の影響は見られなかった。ナフテン酸塩を含有するスラッジは多数報告があり,備蓄原油に元来含まれていたナフテン酸が地下水中のカルシウムイオンと反応してスラッジを生成した可能性が示唆された。本研究は岩盤タンク内スラッジの理解を深め,原油選定およびスラッジ形成抑制対策の高度化等に資する知見を提供する。