石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
酸及びアルカリ触媒による一酸化炭素の高圧反応の機構
竹崎 嘉真
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1978 年 21 巻 3 号 p. 143-158

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抄録
一酸化炭素の加圧反応について, 我々の研究室で行った速度論的及び機構論的研究の代表例を示しつつ総説を行った。
酸触媒反応では三つの別々のパターンが得られている。即ち(1)プロトン酸によるプロトン付加に基づくカーボニウムカチオンの生成, (2)SO3によるサルトン型構造をもつ中間体の生成, 及び(3)プロトン化されたカチオンと Lewis 酸とによる錯化合物の生成 (いずれもCOとの反応の前に) である。
(1)の例としてメタアリルクロライドへのCO付加をとり上げ, この反応ではHFの中で
CH2=C(CH3)-CH2Cl+HFF0_??_Ki
CH3(CH3)C+CH2Cl+F-
なる平衡が存在し, このカチオンにCOが付加して酸フッ化物をつくる。
CH3(CH3)C+CH2Cl+CO(d)_??_k
CH3-C-CH3-CO+-CH2Cl→+F-ClH2C-C-CH3-CH3Y-COF→+H2O 系外
ClH2C-C-CH3-CH3-COOH.
反応速度は
dY/dt=k'fCO{√KiF0•√1-Y-KiF0/2}
でよく表わされる。(記号については本文参照)
(2)の例にはアクリル酸より発煙硫酸中でコハク酸を合成する反応を示した。
SO3+H2SO4→H2S2O7
H2S2O7+H2SO4_??_H3SO4++HS2O7-
A(アクリル酸)+H2S2O7_??_Y(A•SO3)+H2SO4
(A•SO3)≡H2C-O-CH-SO2•COOH
(A•SO3)+CO_??_k(A•COZ•SO3)→+H2O
HOOCH2CH2COOH
(ACOSO3)=H2C-CHCOOH
O=C
O-SO2
速度は
(dZ/dt)0=kHCOPCOY0
Y0はコンプレックスASO3の初期濃度 (4次方程式の根)。
(3)の例ではトルエンから低圧COにより BF3-HF 系中でp-アルデヒドを合成する反応を詳しく解説した。
芳香族化合物はHF中でBF3により
〔H3〓HH〕BF4-
と推定される錯化合物を造って溶解する。ここにCOが容易に付加してアルデヒドを生成する。
初期速度は
(dCAld/dt)0=kPCO[K4HPBF3C0t/1+K4HPBF3]
で良く表わせる。
塩基触媒では今までに2種類の類形が認められている, 即ち(1)基質と塩基が活性な種をつくりこれがCOと反応する場合と(2)塩基がまずCOと結合し活性種となりこれが基質を攻撃する場合とである。
(1)の例としてメタノールから DBU (1,8-ジシクロ-5,4,0-ウンデク-7-エン) の存在下ギ酸メチルを合成する反応を示した。
メタノールはDBUにプロトンを与え
DBUd0+CH3m0OH_??_K1[DBU•CH3OH]_??_K2
DBU•H+CH3O-
なる平衡にあり, 未解離の錯化合物に溶解COが付加してギ酸メチルを与える。
[CH3OH•DBU]+CO(l)_??_K3
[DBU•CO•HOCH3]_??_K4k-4HCO2CH3f+DBU,
速度は
df/dt=k4K1K3HCOfCOd0m0(1-f/feq)
で表わされる。
(2)の例ではK2CO3とCH3COOKとからマロン酸を合成する場合をあげた。
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