石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
周期的パルス法 (第3報)
イソブチルアルデヒドの酸化脱水素反応
服部 忠堀 武前田 誠井伊 正純村上 雄一
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1980 年 23 巻 3 号 p. 158-164

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抄録
イソブチルアルデヒド (IBA) は200°Cで空気と共に空の反応管に流しただけで分解してしまう。このような不安定な物質を触媒上に保持された酸素により選択的に酸化脱水素する方法を確立するため, 単一パルス法および周期的パルス法によりIBAの酸化脱水素を行った。まず, 単一パルス法により触媒の探索を行った (Table 1)。その結果, Sb-Mo, Sb-V, As-Mo-C-22, およびAs-SiO2等が高活性を示すことがわかった。キャリアーガスに酸素を混ぜたところ (Fig. 3), 活性はほぼ一定に保たれた。この結果は, IBAとO2を交互に供給して触媒の酸化状態を保てば, 高収率でメタクロレイン (MA) が得られる可能性を示唆している。
つぎに, 単一パルス法で好結果を与えた触媒を用いて, 周期的パルス法によりIBAの酸化脱水素を行った。すなわち酸化された触媒上にIBAを供給し, 触媒上に保持された酸素により酸化脱水素を行い, つぎに, 酸素を供給し, 還元された触媒を再酸化した (Fig. 1)。ヒ素系の触媒は高い活性を示したが (Figs. 4, 5), 酸化ヒ素の昇華により活性が低下するので, 良い触媒とは言えない。Sb2O3単独では活性も選択性も低く(Fig. 6), MoO3単独では活性は高いが, 選択性が低かった(Fig. 7)。この両者を複合すると選択性が向上した (Fig. 9)。Sb-Vはさらに選択性が高いが, 空気パルス幅の大きい所での収率が低かった (Fig. 8)。周期的パルス法用の触媒には, 表面活性だけでなく, 酸素の保持能力が重要であると考えられる。
以上のように, IBAのような不安定な物質の酸化脱水素反応を周期的パルス法により行いうることが示された。
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