石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
無極性加圧気体に対する水の溶解度の相関
宮原 弘法鈴田 聡荒井 康彦
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1982 年 25 巻 3 号 p. 191-195

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抄録
加圧気体中の平衡水分含有量に関する知見は, 石油化学関連プロセスにおける設計および運転にとって, きわめて重要である。一例をあげると, 水分量がある程度以上になると加圧ガスとの間に気体水和物 (ガスハイドレート) を形成し, 安定した供給や輸送が困難となることが知られている。一方, 極性の著しく強い水分子と無極性の不活性気体や低級炭化水素気体からなる混合物の特性を良好に表現する状態方程式の開発の観点からも, 興味を集めている1),2),4),5)。
温度T, 全圧pにおける加圧気体中の水分量をモル分率y2で表現すると, 熱力学関係式より次式で与えられる。
y22Lx2p2°φ2°V2Vpexp[v2°L(p-p2°)/RT]
ここで温度Tにおける純水の飽和液体モル体積v2°Lおよび飽和蒸気圧p2°は, 広く用いられている実験式13)により求めることができる。いま水相に対する気体の溶解度が無視できるとすれば, 水相における水のモル分率x2を1と近似でき, 活量係数γ2Lも1とおくことができる。この仮定は, 溶解度の比較的大きい二酸化炭素については厳密なものとはいえないが, y2が満足に相関できたので, 計算上の簡便さから, すべての気体について x2=1, γ2L=1の仮定を用いた。したがって, 気相中の水のフガシチー係数φ2Vおよび純水の気相フガシチー係数φ2°Vが与えられるとy2すなわち水分量が計算できる。フガシチー係数は, 適当な状態方程式より導出できるが, ここでは前報6)における次式を採用した。
pv/RT=1+ξ+ξ22/(1-ξ)3-a/RT(v+c)
ここで, ξ=b/(4v)であり, 3個のパラメーターa, b, cを含む剛体球流体3)を基準にした摂動型状態方程式である。この型の状態方程式は, Nakamura ら7)の提案によるものであるが, 著者らの研究6)により水蒸気のp-v-Tおよび第2, 第3ビリアル係数を満足に表現し得ることが示されている。本研究では, 前報6)と同様にp-v-Tデータ8)~11)およびビリアル係数データ12)を用い, 窒素, アルゴン, 二酸化炭素, メタンおよびエタンのパラメーターa,b,cを温度の関数として決定し, Teble 1に示した。状態方程式を気体混合物に適用するためには, パラメーターの混合則が必要とされる (本文中, Eqs. (6)~(8)参照)。パラメーターa, bについては通常用いられているものを採用したが, cについては成分間で符号が異なる場合もあり, 新たな混合則を用いた。フガシチー係数φ2Vおよびφ2°Vを求めることにより (本文中, Eq. (10)参照) 水分量が算出されるが, 必要とされる2個の2成分系特性因子のうちパラメーターaに含まれるものは交差第2ビリアル係数データ14),15)より決定した。パラメーターcに含まれるものは, y2の計算値が実測値と最もよく合うように試行によって決定し, それぞれTable 2に示した。加圧気体に対する水の溶解度の計算手順をFig. 1に示し, 計算値と実測値の比較をFigs. 2~4に示すが, 両者の一致は満足すべきものであり, 工学的計算法として有用と思われる。
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© 公益社団法人石油学会
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