石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
25 巻, 3 号
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  • 玉井 康勝
    1982 年 25 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    潤滑油の流動学的性質は流体潤滑, 弾性流体潤滑の条件下で事故のない運転を行うために重要な因子である。摩擦接触での油膜厚さhは流体潤滑ではマーチンの式, 弾性流体潤滑ではグルビンの式で表されるが, いずれも粘度η, 粘度圧力係数αで支配される。そして摩擦部で金属同士の接触を防ぐには, 表面粗さの標準偏差σとhの比で決まり, h/σ>1ならよい。そこでこの条件を満たす油, そのようなηとαをもつ油が求められ,それにはη, αの分子構造による理解がいる。
    油の粘度の分子論は2大別され, 自由体積論と速度過程論(アイリング理論) がある。かつて実験式としてフォーゲル式が用いられたため前者がよいとされたが, 弾性流体潤滑が重視されてからアイリング式が見直された。これによると粘度は化学反応速度と同様にあつかわれ,
    η=(Nh/V)exp(ΔE/RT)exp(-ΔS/R)exp(pΔV/RT)
    となる。Nアボガドロ数, hプランク定数, Vモル体積, Rガス定数, T絶対温度で, ΔE, ΔS, ΔV は流動の活性化エネルギー, エントロピー, 体積, pは圧力である。ΔE, ΔV は粘度測定から実験的に求められる。
    アイリングの理論は粘性流動が分子的には流動方向への個々の分子の空孔を仲立ちとする移動の和として考えうる事実に基づいており, 潤滑油のような大きな分子でもこの考が成立つことが節片による移動の証明によって示された。ついでΔVは節片が移動するのに必要な空孔とみなされることから, 潤滑油の分子構造とΔVの間に密接な関係があることがわかり, 環分析による分子平均の芳香環, ナフテン環, 炭素6を単位とするパラフィン鎖数からΔV が計算できる半経験式が提案された。
    ηを求めるにはΔV 以外にΔE, ΔS がわからねばならない。そこでΔEV, ΔSEなどが実験的に求められ,12種の油につき前者は0.15±0.01kcal/cm3となることがわかった。ΔSEはΔSHとして調べられたがナフテン系油ではパラフィン系油より大きいこと, 分子量にもよることがわかっただけで, 更に研究が望まれる。
    潤滑油の流動性の改良に高分子調合は重要な手段であるが, 代表的なポリイソブチレンとポリラウリルメタクリレートを用いて, その添加特性を粘性関数によって検討した。両者はΔV, ΔSに対してまったく異なる効果を表した。しかし高圧下ではそのΔVに対する差は少なくなる。
    2円筒摩擦試験機による抗力 (トラクション) の測定を行いΔVとの関連を検討した。各種の油について粘度水準が同一であればΔVが大きい油が抗力も大きい傾向にあることを認めた。
    以上の知見の応用として, 鉄鋼の冷間圧延用の潤滑油として高分子調合油を用いる試みを行った。高分子調合油は薄板 (0.3~0.2mm厚) を圧延する油脂系油とΔVも抗力係数もほとんど等しく, 鉱油を主体成分とするため圧延板の表面清浄性にもすぐれると期待されたが, 連段 (6台) 圧延機を用いた圧延結果では潤滑性は大体油脂と同等で清浄性もすぐれていることがわかった。
    残された問題としてはΔVとΔE, ΔS, さらに抗力の関係の一層の解明があり, これにはΔVと粘弾性流体としての潤滑油の緩和時間との相関が検討されるべきであろう。
  • COM中における石炭•石油の挙動
    竹下 寿雄, 前田 滋, 今吉 盛男, 北田 義之
    1982 年 25 巻 3 号 p. 136-141
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    COMの性状を明らかにし, COM中での石炭と石油の挙動を検討した。8種類の石炭 (200メッシュ以下80%, 120~200メッシュ20%) とアラビアンライト蒸留残さ油から, ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどを添加剤に用いて安定なCOMを製造することができた。製造したCOMを分析したところ, COM中の石炭は自重の3.3~6.9%の重質油を吸収することがわかった。そのためにCOMの真の比重•石炭含有率は, 単に成分の配合割合から計算で求めることはできない。また吸収される重質油は大体において成分•性状ともに重質油の平均組成に近い成分であることがわかった。
  • 山崎 康男, 河合 是, 石倉 泰明
    1982 年 25 巻 3 号 p. 142-149
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    近年, シクロヘキセンの合成方法として, Pt, Pd系触媒を用いたベンゼンの部分水素化反応が研究1)~5)されているが, 転化率は低くまたシクロヘキサンの副生も多く満足な結果が得られていない。さらに, 反応生成物中には未反応ベンゼンも含まれるので, これら成分を単離することは沸点が互いに近似しているため非常に困難である。著者らはこれまでにNi-SiO2-Al2O3触媒を用いたハイドロアルキレーション (水素化二量化反応とも呼ばれている) によるシクロヘキシルベンゼン (CHB)およびシクロヘキシルアレン類の合成8)(Eq. (1)) およびこれら化合物のCr2O3/Al2O3触媒による脱水素反応9)について検討してきた。シクロヘキシルアレンはその構造により脱水素反応が選択的に起こるものと分解反応が主として起こるもの, また両反応が併発して起こるものに大別され, 分解生成物として主にメチルシクロペンテンが得られることを見い出した。
    本報はシクロヘキセンを選択的に合成する新しい方法としてシクロヘキシルアレン類の接触分解反応について検討したものである (Eq. (2))。反応は固定床気相流通系反応装置を用い常圧下で行った。各種触媒について検討したところ, シリカ-アルミナは分解活性が非常に大きい反面, 主反応生成物はメチルシクロペンテンでありシクロヘキセンの生成はごくわずかであった (Fig. 1)。シリカ-アルミナにモリブデナを担持した場合, 担持量の増大とともに分解活性, 異性化活性は低下しシクロヘキセンの選択率は向上したがモリブデナ担持量約30wt%で最大となった。一方, 脱水素生成物はモリブデナ担持量の増大とともに増大し25wt%以上担持した場合には主生成物となった (Fig. 1)。シクロヘキセンのこれら触媒による挙動を調べたところ Fig. 3に示したようにシリカ-アルミナ上では約80%が異性化されメチルシクロペンテンになること, およびモリブデナ担持量の増加とともに異性化活性は低下することがわかった。また, モリブデナ担持量を30wt%に固定しシリカ-アルミナ組成の反応に及ぼす影響をリアクタントとしてCHBを用いて調べたところ Fig. 2に示したようにアルミナ含有量が増大するにつれて転化率は若干向上し, 26wt%以上では低下した。シクロヘキセン, メチルシクロペンテンの選択率の変化も転化率と同様の傾向を示し, シリカ-アルミナの酸性度分布と対応していることが示唆された。一方, 脱水素生成物はアルミナ含有量にかかわらず主生成物であったが26wt%で最低となった。
    これらの実験結果から, 触媒の強酸点が分解と異性化の主たる活性種であることおよびモリブデナの含浸法による担持によりシリカ-アルミナ上の強酸点がモリブデナで覆われるために分解, 異性化活性が低下する反面, モリブデナによる脱水素反応が促進されることがわかった。リアクタントについてみるとTable 2に示したようにアリール基の塩基性が強い程, 分解されやすくかつシクロヘキセンの選択率が向上することがわかった。これらのことから, シクロヘキセンを選択的に合成するためには触媒としては異性化活性の少ない弱酸性の触媒が有利であり, リアクタントとしてはアリール基の塩基性の強いものを用いることが好ましいことが示唆された。
    2,4,6-トリメチル-1-シクロヘキシルベンゼン (2,4,6-TMCHB)をリアクタントとし, シリカ, γ-アルミナ, γ-アルミナにアルカリ金属塩を担持した触媒についてさらに検討したところ, 0.8wt%程度NaOHまたはCsNO3をγ-アルミナに担持した触媒が好ましいことがわかった (Fig. 4)。0.87wt%NaOH-Al2O3触媒を用い, 2,4,6-TMCHBをリアクタントとした場合の最適反応条件は, 反応温度400°C, 接触時間(W/F) 10g-cat•hr/molであり, この条件下における転化率およびシクロヘキセンの選択率はそれぞれ91%, 95%であった。
    動力学データは, 律速段階が吸着リアクタントと活性点との表面分解過程であるとした場合に最もよい適合を示した。また活性化エネルギーは12kcal/molであることがわかった。
  • 田中 達生
    1982 年 25 巻 3 号 p. 150-157
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ヒストリーマッチを目的とするレザバーシュミレーションでは, マッチング期間の選び方により, いくつかの異なった原始埋蔵量GJが求められる。しかし, この値は本来ヒストリーの初期から, 終期まで不変のはずである。そこで, 常にこのGJが一定値になるよう, 物質収支モデルを根底とする種々のマッチング方法を研究し, レザバーに対する水押しの有無, アクイファーの大きさ, 生産歴に伴う水押し範囲の変化, アクイファーの浸透率, 層間混流問題を検討した。
    実フィールドより選択した4レザバーについて, 解析を行ったところ, Figs. 3~10に示すごとく, この方法はいずれも妥当なことが確かめられた。
  • 垂井 達郎, 土田 幸宏
    1982 年 25 巻 3 号 p. 158-161
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    船舶用燃料中への触媒微粉の混入が懸念されてきており, それを判断するため, 重油中のシリカおよびアルミナの迅速かつ正確な分析方法を検討した。
    試料を白金皿で燃焼して電気炉内で灰化し, 灰分を希フッ化水素酸を用い室温で溶解する。この時, 触媒の主成分であるシリカとアルミナは同時に溶解でき, この溶液をアセチレン-亜酸化窒素炎原子吸光法で定量することにより, 約5時間で分析できた。
    定量限界はシリカ10ppm, アルミナ5ppmで重油中に共存する金属やフッ化水素酸は測定に全く影響しなかった。
    モデルサンプルを調製して, 本法により社内6事業所での照合試験を実施した。
  • コバルト-メチルエチルケトン触媒によるメチルフタル酸類の製造
    藤井 健史, 迫田 紘一郎, 山下 源太郎, 栗原 修
    1982 年 25 巻 3 号 p. 162-167
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メチルフタル酸 (MPA) の製造を目的とし, コバルト塩とメチルエチルケトン (MEK) を触媒として, プソイドクメン (PC) の酸化を行った。反応速度式は, rMEK=-kM'[MEK][Co], rPC=-k1'[PC][Co]1.5, ジメチル安息香酸(DBA) については, rDBA=-k2'[DBA][Co][MEK]0.5と表される。DBAおよびMEKの反応はPCの共存によって抑制され, k2'およびkM'は小さくなる。
    生成MPAあたりのMEKの消失量は, [MEK]0.5×[DBA]に比例する。MEKの添加によりDBAの酸化過程が促進されることがわかった。
  • プソイドクメンおよびその中間酸化物のメチル基の相対反応性
    藤井 健史, 斉木 紀次, 山下 源太郎, 栗原 修
    1982 年 25 巻 3 号 p. 168-172
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    プソイドクメン (PC) の酸化生成物の生成経路を明らかにするために, PCおよびその中間酸化物を個別に酸化し, 酸化速度と生成物の分布より各メチル基の相対反応性を求めた。PCの場合は1の位置: 1.0, 2の位置: 0.47, 4の位置: 0.88であった。3,4-ジメチル安息香酸 (DBA) は, 2,4-DBA, 2,5-DBAの2倍の速度で酸化される。PCとDBAのメチル基の相対反応性から計算したメチルフタル酸 (MPA) 異性体の生成比は実験値と一致した。MPA異性体は低濃度では酸化されるが, メチルオルソフタル酸の共存によりその酸化は抑制される。
  • デポジットたい積時のオクタン価要求値増加と燃料経済性
    米川 喜明, 中村 良信, 岡本 伸和
    1982 年 25 巻 3 号 p. 173-176
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    燃焼室たい積物の燃料経済性への影響を市販ミニエンジンと乗用車用エンジンによって検討した。燃焼室たい積物の蓄積試験を行い10モード燃費を測定しORIとの関係をみた。
    燃費の変化はORIの変化に追従する傾向がみられ, 燃焼室たい積物の蓄積はエンジンのORIを生ずる一方でエンジンの燃料経済性を向上させる結果を示した (Figs. 1, 4)。テフロンコーティングしたシリンダーヘッドを用いたミニエンジンの結果でも同様な傾向が認められた (Table 1)。燃焼室たい積物による燃料経済性の向上は主としてたい積物の熱しゃへい効果によるとみられる (Table 2, Figs. 2, 3)。
  • 燃料経済性に対する燃焼室たい積物の役割り
    米川 喜明, 小久保 確郎, 中村 良信, 岡本 伸和
    1982 年 25 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    燃焼解析システムを組み込んだミニエンジン試験により軽負荷条件での燃焼室たい積物の燃費への影響を検討した (Fig. 1)。エンジンの燃焼解析およびエネルギー分布の測定から, たい積物による燃料経済性の向上はたい積物による冷却損失, 摩擦損失の低減 (Figs. 3, 5) と燃焼性の向上 (Fig. 4) によっていることがわかった。
    これらの結果は燃焼室たい積物がエンジンの燃料消費量を有利にコントロールする作用をもっていることを示している。
  • Dumitru MANOIU, 難波 征太郎, 八嶋 建明
    1982 年 25 巻 3 号 p. 183-186
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, トルエンの不均化と m-キシレンの異性化を同時に行い, これらを原料として, ベンゼンとo-およびp-キシレンを高収率, 高選択率で得ることを目的としている。
    有機化学工業の重要な原料であるベンゼン, トルエン, キシレンは, ナフサの改質, およびエチレン合成用のナフサ熱分解で得られる液状生成物からの分離によって製造されている。しかし, ベンゼンおよびキシレンに比較してトルエンの需要は少なく, これをベンゼンとキシレンに転化する不均化反応は, 重要な工業的意義を持っている。また, キシレン異性体中で最も含有率の高いメタ体は, 他の異性体に比較して最も需要が少ない。m-キシレンのo-およびp-キシレンへの異性化は, 重要なプロセスである。そこで, トルエンの不均化と m-キシレンの異性化を同時に進行させることができれば, 芳香族炭化水素の効率の高い利用の一助となる。
    本研究では, 常圧流通系において, 上記二つの反応にすぐれた触媒作用を示すH-モルデナイトを用い, m-キシレンの添加がトルエンの不均化におよぼす影響について検討した。
    H-モルデナイトの触媒活性の経時変化 (Fig. 1) および活性化条件 (Fig. 2) について検討し, 反応開始より1時間以内では安定した活性を示すこと, および823Kの焼成により触媒活性が極大になることを明らかにした。
    トルエンの不均化とキシレンの異性化を, 同時に選択的に行うためには, 副反応であるキシレンの不均化およびメチルベンゼン類の脱メチルと分解を抑制することが必要である。この見地より, 水素による希釈効果 (Table 1), 反応温度 (Fig. 3) および接触時間 (Fig. 4) について検討した。モル比で20倍以上に希釈すると, トルエンの転化率は大きく減少してしまう。反応温度を673K以上に, W/Fを3.2g•hr/mol以上にすると, 脱メチルや分解が大きくなる。また, 不均化によるトルエンの転化率が5%以下の条件でも, キシレンの異性化は十分に進行することを明らかにした。目的とする両反応が選択的に進行する条件として, 水素と炭化水素のモル比10, 温度673K, W/F 2.8g•hr/molを選び, m-キシレンの添加量の影響を検討した (Table 2)。m-キシレンを12.6mol%まで添加しても, トルエンの不均化は抑制されず, ベンゼンの収率はほとんど変化しない。また生成するキシレンの異性体組成は, ほぼ平衡に達しており, トルエンが大量に存在してもキシレンの異性化は抑制されない。しかし, m-キシレンの添加率が増加するにしたがって, キシレンの不均化によるトリメチルベンゼンの生成が増加する。この傾向は, 37.0mol%以上の含有率で明らかになる。
    以上の結果より, H-モルデナイトを触媒に用いると, トルエンの不均化と m-キシレンの異性化を同時に促進することができ, これによってベンゼンの収率を維持したままで, o-およびp-キシレンの収率を向上させることが可能であることが判明した。
  • 荒田 一志
    1982 年 25 巻 3 号 p. 187-190
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    鎖状アルケンのエポキシド化合物である2-メチル-1,2-エポキシプロパン(A), 1,2-エポキシブタン (B) および2,3-エポキシブタン (C) の異性化を固体酸塩基触媒によりパルス法で行い, 環状アルケンのエポキシドである1-メチルシクロヘキセンオキシド (1-MCO) およびシクロヘキセンオキシド (CO) の結果と比較検討した。
    (A) の反応ではイソブチルアルデヒド (1) と2-メチル-2-プロペン-1-オール (2) が主として生成し, 80°Cにおける各触媒の活性•選択性を Table 1に示す。触媒の比活性は (1-MCO)の場合と類似しているが, (1-MCO) においてアリルアルコール生成に高い選択性を示したTiO2-ZrO2, ZrO2, Al2O3-IおよびAl2O3-IIは, 本反応では多量のアルデヒドを生成し, TiO2のみがアリルアルコールに選択性を示した。
    (B) および (C) の反応を200°Cで行い, それぞれ Tables 23に結果を示す。前者ではブタジエン (3), メチルエチルケトン (4) および3-ブテン-2-オール (5) が, 後者では (3), ブチルアルデヒド (6) および2-ブテン-1-オール (7) が主として生成した。反応物の脱水による (3) の生成は (CO) の場合と同様であるが, (CO) ではケトンと共に多量のアリルアルコールを生成したSiO2-Al2O3, H2SO4-SiO2およびFeSO4が, 本反応ではケトン生成に極めて高い選択性を示した。
    アリルアルコールは酸塩基協奏機構で生成されたゆえ, 本鎖状アルケンのエポキシドと塩基点との寄与は環状の場合より弱く, 従ってケトンまたはアルデヒドを主として生成したものと結論した。
  • 宮原 弘法, 鈴田 聡, 荒井 康彦
    1982 年 25 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 1982/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    加圧気体中の平衡水分含有量に関する知見は, 石油化学関連プロセスにおける設計および運転にとって, きわめて重要である。一例をあげると, 水分量がある程度以上になると加圧ガスとの間に気体水和物 (ガスハイドレート) を形成し, 安定した供給や輸送が困難となることが知られている。一方, 極性の著しく強い水分子と無極性の不活性気体や低級炭化水素気体からなる混合物の特性を良好に表現する状態方程式の開発の観点からも, 興味を集めている1),2),4),5)。
    温度T, 全圧pにおける加圧気体中の水分量をモル分率y2で表現すると, 熱力学関係式より次式で与えられる。
    y22Lx2p2°φ2°V2Vpexp[v2°L(p-p2°)/RT]
    ここで温度Tにおける純水の飽和液体モル体積v2°Lおよび飽和蒸気圧p2°は, 広く用いられている実験式13)により求めることができる。いま水相に対する気体の溶解度が無視できるとすれば, 水相における水のモル分率x2を1と近似でき, 活量係数γ2Lも1とおくことができる。この仮定は, 溶解度の比較的大きい二酸化炭素については厳密なものとはいえないが, y2が満足に相関できたので, 計算上の簡便さから, すべての気体について x2=1, γ2L=1の仮定を用いた。したがって, 気相中の水のフガシチー係数φ2Vおよび純水の気相フガシチー係数φ2°Vが与えられるとy2すなわち水分量が計算できる。フガシチー係数は, 適当な状態方程式より導出できるが, ここでは前報6)における次式を採用した。
    pv/RT=1+ξ+ξ22/(1-ξ)3-a/RT(v+c)
    ここで, ξ=b/(4v)であり, 3個のパラメーターa, b, cを含む剛体球流体3)を基準にした摂動型状態方程式である。この型の状態方程式は, Nakamura ら7)の提案によるものであるが, 著者らの研究6)により水蒸気のp-v-Tおよび第2, 第3ビリアル係数を満足に表現し得ることが示されている。本研究では, 前報6)と同様にp-v-Tデータ8)~11)およびビリアル係数データ12)を用い, 窒素, アルゴン, 二酸化炭素, メタンおよびエタンのパラメーターa,b,cを温度の関数として決定し, Teble 1に示した。状態方程式を気体混合物に適用するためには, パラメーターの混合則が必要とされる (本文中, Eqs. (6)~(8)参照)。パラメーターa, bについては通常用いられているものを採用したが, cについては成分間で符号が異なる場合もあり, 新たな混合則を用いた。フガシチー係数φ2Vおよびφ2°Vを求めることにより (本文中, Eq. (10)参照) 水分量が算出されるが, 必要とされる2個の2成分系特性因子のうちパラメーターaに含まれるものは交差第2ビリアル係数データ14),15)より決定した。パラメーターcに含まれるものは, y2の計算値が実測値と最もよく合うように試行によって決定し, それぞれTable 2に示した。加圧気体に対する水の溶解度の計算手順をFig. 1に示し, 計算値と実測値の比較をFigs. 2~4に示すが, 両者の一致は満足すべきものであり, 工学的計算法として有用と思われる。
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