抄録
合成ゴムの架橋剤として有用な5-エチリデン-2-ノルボルネン (1) を, 1,2-ブタジエン (1,2-BD) とシクロペンタジエン (CP) の Diels-Alder 反応より直接合成した。生成物は主に1:1付加物, 1:2付加物であり, 230°C以上では少量のポリマーが生成した。1:1付加物のVPC分析は主に4本のピーク, A-D, を示した (Fig. 1)。
おのおののピーク成分を蒸留により単離し, 13C-NMRによってその構造を決定した (Table 1)。Aの成分は1,2-BD dimer (4) であることがわかったが, その構造は決定できていない。Bの成分は6-メチル-5-メチレン-2-ノルボルネン (2) と同定され, その立体構造は13C-NMRケミカルシフトの検討から, emdo 配向した2aであることがわかった。Cの成分はVPC分析では, 1本のピークを示したが, 13C-NMRでは9:1の強度比を持つ2成分よりなっていることがわかった。この付加体の構造はEq. (1) に従って別途合成した1の13C-NMRスペクトルと一致した。主成分 (約90%) は (E)-5-エチリデン-2-ノルボルネン1aであり, 副成分は (Z)-5-エチリデン-2-ノルボルネン2aと同定された。5の異性化による1の合成では, 1aと1bの生成比が3:2であったのに対し, 1,2-BDとCPの環化付加では高い選択性で1aを与えることがわかった。Dの成分は標準試料の分析データからジシクロペンタジエン (3) と容易に同定された。1,2-BDとCPの等量反応の温度による1:1付加物の収率と生成物分布をTable 2に示した。反応温度190°Cで反応は速やかに進み, それ以上高い温度では1:2付加物が増加した。1と2の生成比は反応温度に依存し, 190°Cで2.3~2.4, 230°Cでは1.8~1.9であった。1の収率は190°C, 3時間で最高値を示し, それ以上では1:2付加物が増加した。CPに対し2倍量の1,2-BDを用いることにより1の収率は43%に達した (Table 3)。種々の溶媒中での反応結果から, アルコールのような極性溶媒は1:2付加物やポリマーの生成を抑えることがわかった。一方n-ヘキサンのような非極性溶媒中では, 速やかに環化付加が起こり, 1:1付加物のみならず, 1:2付加物やポリマーの生成物も多く, 1:1付加物の合成にはベンゼン溶媒が最適であることがわかった。