1995 年 38 巻 6 号 p. 390-398
環境保全の観点から, 鉄鋼業における炭酸ガスおよびエクセルギー消費量の低減は急務の課題である。この問題の解決策として, 本研究ではコークスから補助燃料への高炉エネルギー源の転換および25.7Cu-60ZnO-14.3Al2O3 (mol%) 触媒による高炉排出ガスからのメタノール合成について検討した。高炉レースウェイでの理論燃焼温度一定条件のもとで, 天然ガス, CWM, COMおよび微粉炭の吹き込みを想定した高炉操業を熱物質収支により予測した。
補助燃料吹き込みにより, 高炉排出ガス中の水素が増加し窒素が減少することが予測された。メタノール合成実験において, 反応ガス中のH2/(CO+CO2) を従来のオールコークス操業時の値に相当する0.05から0.5にすることによってメタノール収率は約40倍に増加し, さらに窒素濃度の低下によっても高いメタノール収率が得られた。したがって, 補助燃料吹き込みは高炉排出ガスからのメタノール合成に有利に働く。
製銑システムからの温室効果ガス (GHG) 排出量は, 補助燃料の吹き込みによって減少する傾向を示した。エクセルギー消費量もCWM, COMおよび微粉炭の吹き込みによって低減した。GHG排出量, エクセルギー消費量の低減および高炉排出ガスからのメタノール合成の観点からCOMが有効で, COM 100kg/tHMの吹き込みを行うことにより, 製銑システムからのGHG排出量は535から501kg-C/tHMに, エクセルギー消費量は9.0から8.3GJ/tHMに減少した。