石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
38 巻, 6 号
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  • 永井 正敏, 尾見 信三
    1995 年 38 巻 6 号 p. 363-373
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    担持および無担持のモリブデン窒化物の調製, 構造, 表面および反応特性について概説した。NH3またはN2/H2気流中でMoO3を昇温しながら窒化すると, 比表面積の高いモリブデン窒化物が得られる。高い空間速度, 細かい粒径, 遅い昇温速度ほどMoOxN1-x中間体を生成し高比表面積を有する窒化物を形成する。また, モリブデン窒化物の構造と組成, N2, H2およびCOの吸着について議論した。さらに, モリブデン窒化物は種々の反応, とりわけ水素化脱窒素反応においては硫化Ni-MoおよびCo-Mo触媒に匹敵する活性を有し, ジベンゾチオフェンの水素化脱硫反応においてはC-S結合の開裂反応に著しい活性を示す。また, アンモニア合成やその分解反応中またはN2気流中Mo触媒上に吸着した窒素の挙動について議論した。最後に, MoO3からMoO2を経てMo2Nへの転移スキームの発現機構を提案し, 水素化脱窒素反応に対する活性点について考察した。
  • 反応初期のラジカル分解過程について
    八木下 和宏, 五十嵐 仁一
    1995 年 38 巻 6 号 p. 374-383
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ベンゼン中におけるジアルキルジチオリン酸亜鉛 (ZDTP) によるクメンハイドロパーオキサイド (CHP) の初期のラジカル分解反応を, 31P NMRおよびMS (Mass Spectrometry) を用いて研究した。これまでにこの反応は, ZDTP自身とCHPによるものおよびこの反応により生じた塩基性ジアルキルジチオリン酸亜鉛 (b-ZDTP) によるものの二つの段階で進むことが報告されている。今回 in situ 31P NMR法を用いて, より速いZDTPとCHPの反応については0~34°C, 引き続いて起こるやや遅いb-ZDTPとCHPの反応については30~60°C, ZDTPとCHPのモル比 [ZDTP]/[CHP]=0.1~0.5の条件下でZDTPおよびb-ZDTPのシグナルの経時変化を追跡し, 二つの反応速度定数およびアレニウスパラメーターを決定することができた。得られた二つの反応のアレニウスパラメーターから70°CにおけるZDTPおよびb-ZDTPとCHPの反応速度定数を求め, CHPの初期のラジカル分解過程の反応プロフィールを計算したところ, ZDTPは短時間で速やかに消耗されており, 主要な活性種はZDTPそのものではなく反応により生じたb-ZDTPであることが明らかになった。CHP分解の主要活性種であるb-ZDTPについて, CHPとの反応機構を31P NMRおよびMSを併用して詳細に検討した。その結果, MSにより初めて酸素原子を中心として正四面体の各辺にジチオリン酸配位子をもつb-ZDTP分子のイオンピークの観測に成功するとともに, このb-ZDTPの四面体構造はCHPとの反応の過程において見かけ上破壊されることなく, 分子内のジチオリン酸配位子の硫黄原子を酸素原子に置き換えながら進行することを見い出した。
  • 脱硫活性と表面組成に対するNTA (ニトリロ三酢酸) の添加効果
    清水 健博, 笠原 清司, 清原 哲也, 河原 幹, 山田 宗慶
    1995 年 38 巻 6 号 p. 384-389
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    含浸液にキレート剤としてNTAを添加してCo-Mo/Al2O3を調製し, Co/Mo比や焼成処理の有無を変えたときの水素化脱硫 (HDS) 活性, 表面金属組成の変化を調べた。NTAの添加によってベンゾチオフェンのHDS反応に対する触媒活性は約20%向上した。Co/Mo比を変えて調製した触媒の活性試験の結果から, Coの添加量を増していくとCo/Mo比で約0.3までは同一の高活性サイトが形成され, それ以上では活性の低い表面Co種が形成されると推定された。また, NTAの添加は高活性サイトの形成に寄与し, 結果として高活性サイトの数を増加させるものと考えられた。硫化処理前に焼成処理を施すことにより, NTA添加によるHDS活性の向上は約半分に低下した。硫化処理前の触媒前駆体についてXPS測定を行った結果, 焼成処理を施さなかった場合の表面近傍のCo濃度は, NTAを添加した方が添加しなかった場合よりも高かった。すなわち, NTAはCoの表面濃度を上げる働きを持ち, これがHDS活性の向上に寄与している可能性がある。
  • 佐藤 弘孝, 秋山 友宏, 村松 淳司, 杉本 忠夫, 八木 順一郎
    1995 年 38 巻 6 号 p. 390-398
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    環境保全の観点から, 鉄鋼業における炭酸ガスおよびエクセルギー消費量の低減は急務の課題である。この問題の解決策として, 本研究ではコークスから補助燃料への高炉エネルギー源の転換および25.7Cu-60ZnO-14.3Al2O3 (mol%) 触媒による高炉排出ガスからのメタノール合成について検討した。高炉レースウェイでの理論燃焼温度一定条件のもとで, 天然ガス, CWM, COMおよび微粉炭の吹き込みを想定した高炉操業を熱物質収支により予測した。
    補助燃料吹き込みにより, 高炉排出ガス中の水素が増加し窒素が減少することが予測された。メタノール合成実験において, 反応ガス中のH2/(CO+CO2) を従来のオールコークス操業時の値に相当する0.05から0.5にすることによってメタノール収率は約40倍に増加し, さらに窒素濃度の低下によっても高いメタノール収率が得られた。したがって, 補助燃料吹き込みは高炉排出ガスからのメタノール合成に有利に働く。
    製銑システムからの温室効果ガス (GHG) 排出量は, 補助燃料の吹き込みによって減少する傾向を示した。エクセルギー消費量もCWM, COMおよび微粉炭の吹き込みによって低減した。GHG排出量, エクセルギー消費量の低減および高炉排出ガスからのメタノール合成の観点からCOMが有効で, COM 100kg/tHMの吹き込みを行うことにより, 製銑システムからのGHG排出量は535から501kg-C/tHMに, エクセルギー消費量は9.0から8.3GJ/tHMに減少した。
  • 高 士秋, 鈴木 宏典, 中川 紳好, 白 丁栄, 加藤 邦夫
    1995 年 38 巻 6 号 p. 399-406
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    実験室規模の内径0.053m, 分散板からの高さ1.0mの粉粒流動層反応器を用い, 573~873Kの温度範囲で同時脱硫脱硝を行った。微粒子脱硫剤を粗い流動化媒体粒子が流動化している層内に連続的に供給した。安価な脱硫剤の候補としてかなりの量の酸化鉄を含んでいる製鉄の副生成品の酸化鉄ダストを使用した。不活性シリカサンドと活性脱硝触媒 (WO3/TiO2) の二種類の粗粒子を流動化媒体粒子として使用した。脱硫については反応温度, 鉄と硫黄のモル比, 空筒基準ガス速度, 媒体粒子の静止層高, SO2の入口濃度, NH3の入口濃度, 流動化媒体粒子の種類, 脱硝については反応温度, NH3の入口濃度, 流動化媒体粒子の種類の影響をそれぞれ調べた。酸化鉄ダストは安価な脱硫剤としてだけでなく, わずかながらNOの還元触媒となることが分かった。流動化媒体粒子として脱硝触媒を使ったとき, 温度773K, 鉄と硫黄のモル比3.0で60%の脱硫率が得られ, アンモニアとNOのモル比1の時, 100%の脱硝率が得られた。
  • ハイブリッド触媒の設計概念
    中村 育世, 張 愛華, 相本 康次郎, 藤元 薫
    1995 年 38 巻 6 号 p. 407-412
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    水素および窒素雰囲気中で, 一連のZSM-5触媒を用いて, n-ペンタンからi-ペンタンへの骨格異性化反応を検討した。典型的な二元機能触媒であるPt/H-ZSM-5触媒では, 反応温度270°Cで平衡転化率に近い高i-ペンタン収率が得られた。H-ZSM-5とPt/SiO2は単独では極めて低い異性化活性, 選択性を示したが, H-ZSM-5とPt/SiO2あるいはPt/Al2O3を物理混合したいわゆるハイブリッド触媒はPt/H-ZSM-5に匹敵する高い反応活性, 異性化選択性を示すことを見い出した。イオン交換法により調製したPd/H-ZSM-5はPt/H-ZSM-5と比較して, 顕著に活性が低いが, Pdを含むハイブリッド触媒も Pt-hybrid 触媒と同じように高い異性化活性を示した。ハイブリッド触媒において, H-ZSM-5とPt/SiO2の混合状態は反応活性, 異性化選択性に大きな影響を与え, 両触媒が緊密に接触している状態においてはじめて高い異性化物収率が得られることが分かった。また, 水素雰囲気において高い異性化収率を与える触媒でも窒素雰囲気では, n-ペンタンの転化率は著しく低下し, 重合および重合物の分解が支配的となった。Pt/SiO2とUSYあるいはモルデナイトよりなるハイブリッド触媒においても優れた異性化活性が認められた。これらの結果はスピルオーバー水素が酸点の再生, 反応物の活性化, および高い異性体収率を与えるための反応中間体の安定化などの面において重要な役割を果たしていることを示唆する。
  • 蛯名 武雄, 横山 千昭, 高橋 信次
    1995 年 38 巻 6 号 p. 413-420
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    キノリン-インドール, イソキノリン-インドール, 2-メチルキノリン-インドールおよび2-メチルキノリン-イソキノリンの四つの2成分混合系の固液平衡関係を視覚観察法と示差熱測定により250Kから330Kまでの温度範囲で測定した。これらの系はいずれも共融系であった。インドールを含む系では付加化合物の形成が確認された。イソキノリン-インドール系と2-メチルキノリン-インドール系では化学量論比が1:1の付加化合物が確認された。液相においてイソキノリンとインドールの間のN-H…N型の水素結合が赤外分光法により確認された。キノリン-インドール系ではキノリンとインドールの化学量論比が1:1および2:1の2種の付加化合物の形成が確認された。これらの付加化合物を形成する系に対して, 化学種の組成と解離定数の関係を表す式を導出した。さらに, 導出した式を用いて, 付加化合物を形成する系の固液平衡関係を相関した。
  • Ju-Hwan CHOI, Young-Sang CHOI, Oh-Kwan KWON
    1995 年 38 巻 6 号 p. 421-431
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    軽油の燃焼熱とセタン価を屈折率より推定し, またセタン価を燃焼熱より推定した。これらの推定したセタン価と燃焼熱はそれぞれ実験値と一致した。芳香族化合物 (芳香族, 一環芳香族, 多環芳香族) の物性値 (密度, 屈折率, 蒸留温度, 動粘度, 燃焼熱) や軽油のセタン価への影響を系統的に調べた。密度, 屈折率, 蒸留温度 (50%と90%) は多環芳香族の量が増えれば増加するが, 燃焼熱とセタン価は減少する。軽油の多環芳香族は物性値, セタン価に影響するという結果が得られた。
  • Wega TRISUNARYANTI, 三浦 雅博, 野村 正勝
    1995 年 38 巻 6 号 p. 432-438
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    インドネシア産ミナスおよびデュリ原油ならびにアラビアンミックス (AL/AM) の3種の原油から得た脱れき油 (DAO) を対象に, カラムクロマト分離とNMR分析により化学構造を解析するとともに, それらの分解特性をキュリーポイント熱分解法により評価•検討した。各DAOのクロマト分離から, ミナスでは飽和化合物留分が, AL/AMでは芳香族化合物留分が相対的に多いこと, およびデュリはその中間であることがわかった。また, 各飽和化合物留分のNMR分析より, ミナス, デュリでは直鎖パラフィン構造が主体であるのに対し, AL/AMではシクロパラフィン構造が相対的に多いことが明らかになった。一方, 各DAOならびにそれらのフラクションの熱分解では, AL/AM-DAOの飽和化合物留分にコーク生成を抑制する作用があることを示唆する結果が得られた。また, このことは, AL/AM-DAOの飽和化合物留分をミナスおよびデュリDAOの芳香族化合物ならびに極性化合物留分とを混合すると, それぞれの留分からのコーク生成量が顕著に減少するという実験事実からも支持された。これらの構造分析ならびに熱分解結果より, AL/AM-DAOに含まれるシクロパラフィン構造がコーク生成の抑制に有効である可能性が示唆される。
  • 表面構造の変化と助触媒効果
    笠原 清司, 小泉 直人, 山田 宗慶, 宇田川 康夫
    1995 年 38 巻 6 号 p. 439-446
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Fe, Co, Niの添加に伴う硫化Mo/Al2O3の表面構造の変化を調べるために各種のキャラクタリゼーションを行った。本研究ではMo周囲の局所構造と触媒表面の配位不飽和サイトに注目して, Mo K-edge EXAFS, 吸着NOのIRスペクトル, およびパルス法によるNO吸着量の測定をそれぞれ行った。Mo K-edge EXAFSの測定から, Coを添加してもMo側の構造はあまり影響されないが, Niの添加はMoS2微結晶の成長を促進し, Feの添加は逆にその成長を妨げることが推測された。Moサイトあるいは助触媒サイトに吸着したNOの挙動を調べるため, 触媒表面に吸着させたNOのIRスペクトルを測定した。各助触媒の添加によってMoサイトへのNO吸着が大きく抑制され, CoやNiの場合と同様にFeもMoS2微結晶のエッジサイトをふさぐことができることが示唆された。また, NOのパルス吸着によって配位不飽和サイトを定量した結果, Feを添加したときはCoやNiを添加したときに比べて配位不飽和サイトが著しく増加することが明らかとなった。以上のことから, MoS2微結晶のエッジサイトを利用した助触媒の分散度は, Fe>Co>Niの順に低くなることが推察された。しかし, 前報の結果が示すようにFeを添加しても水素化脱硫活性はほとんど向上しない。
  • 進藤 隆世志, 吉田 智昭, 山田 大輔, 大嶋 洋三, 大沼 浩
    1995 年 38 巻 6 号 p. 447-450
    発行日: 1995/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    チオ尿素付加反応による2,6-ジアルキルナフタレンの分離に関する基礎的な知見を得るため, 2,6-ジエチルナフタレンおよび2,6-ジイソプロピルナフタレンのチオ尿素付加反応の平衡定数, 付加物の生成熱および組成について検討した。0°Cないし30°Cの温度範囲で2,6-ジエチルナフタレンおよび2,6-ジイソプロピルナフタレンのチオ尿素付加物分解反応の平衡定数はそれぞれ1.56×10-2~5.19×10-2および1.36×10-2~6.84×10-2であること, チオ尿素付加物の生成熱 (-ΔH) はそれぞれ28kJ•(mol of 2,6-diethylnaphthalene)-1および37kJ•(mol of 2,6-diisopropylnaphthalene)-1であること, また付加物の組成 (基質分子に対するチオ尿素分子のモル比) はいずれも5.9±0.1であることが明らかになった。
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