環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 気候変動と専門家
気候変動と専門家——2つの「現場」のつながりに注目して——
立石 裕二
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2020 年 26 巻 p. 7-23

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抄録

2015年のパリ協定で示された「2°C 目標」を実現するには,短期間で社会の抜本的な変革が求められる。国際会議の場では,気候工学や食料生産のためのバイオ技術のように,有効ではあるが潜在的な危険性を持った選択肢が議論の俎上に載るようになった。本稿では,異質な「現場」をつなぐことで,変革をもたらす主体となりうる専門家のあり方について,アクターネットワーク理論,とくにB. Latour の議論を参考にしつつ論じていく。気候変動問題を分析する上では,これまで環境社会学が主に取り上げてきた地域環境の現場に加えて,グローバルモデルという「もう1つの現場」を取り上げ,2種類の現場の間の関係に注目することが重要である。グローバルモデルの現場では,気候変動に関する研究や将来予測,政策・技術オプションに対する評価,国際的な対策枠組みの検討と決定などが行われる。日本において,グローバルモデルの現場と地域環境の現場という 2 つの現場の間が十分につながっていないことが,気候変動に関する議論や対策が進みにくい一因になっている可能性について検討する。さらに,グローバルモデルあるいは地域環境の現場から出発しつつ,両者をつなぐ専門家の役割に注目した先行研究のレビューを行い,環境社会学にとっての今後の研究課題について検討していく。最後に,こうした研究課題に取り組むことの実践的な意味と,2つの現場をつなぐ専門家として環境社会学者が果たすべき役割について考察する。

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© 2020 環境社会学会
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