学術論文にはさまざまなバージョンが存在するが,その中でも,VoR(Version of Record)は,学術の記録としてのバージョンとして確固たる地位を築いてきた。しかし,VoRをめぐり,出版社と学術コミュニティとの間に論争が起こっている。また,この議論の中で,学術コミュニティ側から,VoRに代わるRoV(Record of Versions)という考え方が提唱された。本稿では,はじめに,米国情報標準化機構(NISO)と学会・専門協会出版協会(ALPSP)の共同ワーキンググループが推奨する学術論文のバージョンの定義を解説する。次に,VoRをめぐる出版社と学術コミュニティの論争を取り上げ,その中から生まれたRoVの考え方を紹介する。また,RoVを具現化するためのさまざまな取り組みについても触れる。