植物学雑誌
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フクロフノリの黒星病とその病原子嚢菌の一新種
宮部 金吾時田 〓
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1948 年 61 巻 721-726 号 p. 116-118

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抄録

昭和23年7月初旬, 北大忍路臨海實驗所及び, 室蘭海藻研究所附近の岩礁上の, フクロフノリ群叢は一帶に色が淡く, 全然無色の個依も澤山まじつているのを見たが, 枯死した体のみならず, 生きている個体にも, 肉眼で辛うじて認め得る小黒点が表面に散在していた。檢鏡の結果, 小黒点は一種子嚢菌の子嚢殼に外ならぬことを知り, 精査の末, グイナルヂヤ屬の新種なりとの結論に達した。同屬の既知海藻寄生種は3種あり, みな緑藻に寄生し, 褐•紅藻に寄生する種は從來未發見である。本新種は, 子嚢殼の著しく小さいこと, 子嚢と胞子は比較的大きいこと, 胞子は常に下方に偏つて1隔膜を有し, 2個細胞であること, 胞子の形は笏形で両端が丸いこと等が, 既知海産3種との異点として挙げられ。本菌を和名イソクロホシカビと名付け, 本菌の寄生によるフクロフノリの病害を, 黒星病と名付ける。産地は北海道忍路, 室蘭。

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