植物学雑誌
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植物體内に於ける液流の上昇速度の電流計による決定
國谷 雄三郎
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1950 年 63 巻 750 号 p. 255-259

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抄録

膨壓の變化によつて組織の電氣的條件は一定の變化を來し, 膨壓の増加は電流計にポジテブの振れを, 減少は反對のネガテブの振れを起す。液の上昇によつて膨壓の増加を來す植物では體内の液の上昇は電流計がポジテブの方向に振れることによつてわかる。
Impatiens balsaminaの鉢植えを用いて, そのしおれかけたものに, 莖に電極を上下2つ装置して實驗を行つた。根より第1接點Aまでの距離をd, 灌水してから電流計の第1反應までの時間をtとすれば, 上昇速度はv=d/tである。次に上昇液流は第2の接點に達し前と反對の方向に電流計が振れる。この第1から第2の反應までの時間をt', 第1第2接點間の距離をd'とすれば, 2點間の移動速度はv'=d'/t'である。根と第1接點との距離は, 第1第2接點間の距離の如くには正確に決定出來ないから, 後者によるのがより正確である。熱電氣法による測定 (KUNIYA 1950) の結果によると, 莖の基部に於ける液流速度は莖の上方部よりも一般に速い。しかし本實驗に於ては, 莖の基部に於ける速度も上方部に於ける速度も大體同程度を示してはいるが, 一般に基部に於けるものが遅くなつている。このことは, 水が根に吸収されるまでに時間を要し, この時間が速度計算に加わるものと考えられるのである。この時は, 二極法 (Di-phasic method) によつて除去することが出來る。
上昇速度は夫々表に示されている如くである。
この實驗は, 1948年及び1949年の夏に行つたもので, 東北大學生物學教室山口教授の指導並びに助言を忝うし, 深く感謝する次第である。

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