植物学雑誌
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植物組織の褐変現象について
第五報 ガマズミ属植物の葉におけるクロロゲン酸およびその異性体
今関 英雅
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1959 年 72 巻 853-854 号 p. 316-324

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抄録

ガマズミ属の葉は傷害, 温和な加熱などによつて, いちじるしい褐変をおこすことがしられている。本論文ではこの褐変に関係ある物質を同定し, その酸化系をしらべた結果を報告する。
1) ガマズミ属における褐変の原因となる物質はクロロゲン酸およびその異性体と考えられる。12種の材料葉には例外なく, かなり多量のクロロゲン酸がふくまれ, 同時にその異性体のどれかが, つねに存在する。
2) クロロゲン酸と同一の呈色反応, 組成をしめすが, 既知のクロロゲン酸異性体 (イソ, ネオ, プソイド異性体) とはちがったフエノール成分が7種の葉に存在する。これはクロロゲン酸の幾何異性体の1つとかんがえられる。
3) ガマズミ属の葉にはクロロゲン酸を酸化して褐色物質にかえる酸化系が存在する。この酸化系はシアン化カリウム, ジチオカルバミン酸ジエチルによつて阻害をうけ, 最適pHが大体6.5~7.0にある。また酸化反応は反応の進行にともなつて比較的はやい不活性化をしめす。
4) 酸化系はスルフアニル酸でいちじるしく反応が促進され, 赤色の色素が形成される。フエニルアラニンでも同様の効果がみられた。
5) したがつて, 葉における褐変はクロロゲン酸の酸化, 重合だけによるのではなく, ある種のアミン,アミノ酸, 特に細胞タンパク質も褐変反応に関与しているとかんがえられる。すなわち, クロロゲン酸が酸化されてキノンとなり, これがタンパク質などのアミノ基と反応して褐色物質を形成するものと推定される。

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