植物学雑誌
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縞枯山の植生についての生態学ならびに生理学的研究
III. シラビソ, オオシラビソ林における種内競争と林分構造の発達
黒岩 澄雄
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1959 年 72 巻 856 号 p. 413-421

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抄録

すでに報告された縞枯山のシラビソ, オオシラビソの各林分について, 樹木測度の度数分布と立木密度を調べ, さらに若い林分について階級分けされた林分生産構造も調べた。
林分の発達に対して, 樹高度数分布はL型からN型化する傾向, 幹直径分布はL型が維持される傾向が見られた。個体重と葉重との幹直径に対する関係式から評価されたこれらの重さの度数分布はともに極端なL型であった。さらに標準木 (幹断面積に対する平均木) の幹直径, 葉重, 個体重はこれら測値のそれぞれに対する平均値よりも小さいことが証明された。
過熟木林分をのぞいて, 各林分における枯損率は一定 (年当り7.5%) でこの半分は被圧木階級における枯死木で占められた。標準木の幹直径や樹高は半対数式で, 地上部重は両対数式で立木密度に対して直線関係を示した。林分の幹断面積合計はその発達とともに単調な増加を示さず, 成木林分において少し減少した。
若い林分で得られた生産構造図では, 共通して, 同化器官の大部分は優勢木階級によって, 非同化器官のほとんどが優勢木と中級木との両階級によって占められていた。林分の発達にともなって, 非同化器官の林分当りの重さは大いに増大し, 同化器官のそれはいくらか増加したが, 葉面積指数(5.0)はほとんど変らなかった。

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