植物学雑誌
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脱窒細菌の嫌気, 好気細胞の比較生理
森 健志鈴木 秀穂
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1966 年 79 巻 931 号 p. 28-35

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抄録

脱窒細菌 Pseudomonas denitrificans の銅を含む脱窒酵素, チトクロムなど電子伝達系成分の解析がわれわれの研究室でおこなわれてきたが, 一方, Micrococcus No. 203でこれとは性質の異った亜硝酸還元酵素, 電子伝達構造について, かつて江上研究室で,浅野, 堀らの研究があり, また, Pseudomonas aeruginosaのチトクロムc酸化酵素として2種のヘム基を備えた特殊な蛋白がえられ, それが亜硝酸還元酵素として働くことが奥貫の下で, 堀尾, 山中, 東らによって明らかにされた. 同じ類の反応がかくも異った機構を持つことは甚だ面白いことで, これらの電子伝達および脱窒反応の系統的理解に資するために, さしあたりわれわれの脱窒細菌の嫌気, 好気培養の細胞の代謝系の現象的比較研究についてここで報告する.その結果は大体本文第3表にまとめてある. なお, 亜硝酸代謝の適応的性質, その酵素適応が発育条件で10時間という長期間を要すること, ただし好気細胞にも構造的な微弱な活性の存在すること, 脱水素酵素には特に顕著な差異を認めなかったことなどが明らかにされた.
いまのところ, 上記3種類の亜硝酸還元機構をエネルギー代謝として統一的に理解する見通しを語る段階ではないように思われる.

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