植物学雑誌
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花粉の生理学的研究 XX
花粉の人工培養における密度効果と混合効果について
岩波 洋造
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1970 年 83 巻 989 号 p. 364-372

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抄録

1)花粉の人工培養における密度効果と混合効果 について, 種々の実験が行なわれた.
2)花粉の密度効果には, 次の3つのタイプがあ ることがわかった.
(i)正の密度効果を示すもの一花粉を密にま くと花粉管がよくのびた (例, テッポウユリ).
(ii)密度効果を示さないもの一花粉を密にまいても疎にまいても同じように花粉管がのびる(例, ツバキ).
(iii)負の密度効果を示すもの一花粉を疎にまく方が花粉管がよくのびる(例, サザンカ).
3)他種の花粉と混合散布されたときの影響のあらわれを混合効果と総称し, その中で促進的なものを正の混合効果,抑制的なものを負の混合効果とよんだ.
4)混合散布されたサザンカの花粉はテッポウユリ, ツバキ, チャなどの花粉の生母をきわめて強く抑制する.
5)混合散布されたテッポウユリの花粉は, ツバキの花粉の生長には影響を与えないが, チャの花粉の生長を強く抑制する.
6)混合散布されたマツの花粉はテッポウユリ,ツバキ,チャなどの花粉の生長に, ほとんど影響を与えない.
7)サザンカの花粉が他種の花粉の生長を強く抑制したり,負の密度効を示したりするのは, サザンカの花粉が抑制物質をもっているからである.

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