日本緬羊研究会誌
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研究報文
中国・雲南高原産の蘭坪烏骨羊ならびに香格里拉羊に関する系統解析
角田 健司山縣 高宏松山 高明余 福紅熊 国庭秋 守菜趙 光陳 志盧 徐斌夏 海磊郭 佳張 勉冀 徳君毛 永江楊 章平
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2019 年 2019 巻 56 号 p. 12-23

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抄録

中国の雲南高原で飼養されている蘭坪烏骨羊と香格里拉羊の由来・起源を究明するため,血液タンパク・非タンパク型5 システムの遺伝子座位(TF, ES, HB-β, XP, KE)の遺伝子頻度データを基にNei の遺伝的類似性と遺伝距離の評価,クラスター分析(NJ とUPGMA)および主成分分析(PCA)を試みた。タンパク型・非タンパク型システムの分析には各種の電気泳動法およびイオン測定法を使用した。これまでに調査された東・南アジア系の26 種の在来羊種および集団を比較対象にした。両羊種はHB-β座位のX 遺伝子とXP 座位のP遺伝子やHB-β座位のB遺伝子とKE 座位のL 遺伝子の2 つの組合せによる遺伝子相互の特異な頻度分布から北方系羊種に属する特徴が示された。これらの5 座位における蘭坪烏骨羊と香格里拉羊の平均ヘテロ接合体率は,それぞれ 0.3346 と0.4407 で,両者の遺伝的変異性はアジア羊種において通常の範囲に相当した。東・南アジア産の様々な羊種・集団間におけるNei の遺伝的類似性および遺伝距離では,蘭坪烏骨羊はヒマラヤ系の寧蒗黒羊と最も近縁であり,香格里拉羊は同羊との関係が比較的に強く,モンゴル・中国系との類似性の高いことが認められた。Nei の遺伝距離のマトリックスから推定されたNJ 法とUPGMA 法による無根と有根の枝分かれ図において,さらにPCA 法でも,蘭坪烏骨羊は寧蒗黒羊と同じ仲間で,ヒマラヤ系内で分岐していた。 一方,香格里拉羊は,NJ およびUPGMA で,それぞれ,モンゴル・中国系の近くで分岐し,そして,それらの系と共に1 つのクラスターを形成した。PCA においてはモンゴル・中国系とチベット系との間に分布した。よって,蘭坪烏骨羊は寧蒗黒羊と同族であり,香格里拉羊は,モンゴル系が主体で,それにチベット系が関与し,両者の交雑集団の可能性が示唆された。

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© 2019 日本緬羊研究会
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