抄録
ヨーロッパヒツジ4品種とアジア在来ヒツジ4種における2つの主要なmtDNAハプロタイプA, Bの分布拡散状況を確認する目的でそのゲノムのHinf I RFLPをPCR法によって分析した。ヨーロッパヒツジのグループではSuffolk種とCheviot種はBタイプの頻度が著しく高く (88および100%), Corriedale種やFinnish Landrace種では共にBタイプの高頻度に加え, Aタイプが約40%の比較的高い頻度を有した。一方, アジアヒツジのグループではインド系のKagiとLampuchhreの両種が共にAタイプが圧倒的に高く (95および96%), チベット系ではBaruwal種にAタイプが90%みられた。だが, Bhyanglung種はAタイプが60%, Bタイプが40%と他のアジア種とは異なった。このように品種によってハプロタイプの頻度構成は異なったが, 遺伝的関係を評価することは困難であった。しかしながら, ヨーロッパヒツジとアジアヒツジのような全体的なレベルからみると, 前者はBタイプが平均71%, 逆に後者はAタイプが平均85%の高頻度であり, 両者の間には著しい違いがみられた。したがって, ヨーロッパヒツジとアジアヒツジはそれぞれ基本的に異なった母系先祖から由来した個体で主に構成されていることが示唆された。