抄録
土中に埋めた羊毛 (原毛) の引っ張り強度の変化について検討した。
毛刈り後の保存期間の異なるサフォーク種の羊毛 (毛刈り後3年経過, 2年経過, 2ヵ月経過) を供試し, 上下2段に分けて埋め, 約30cmの高さの畝とした。羊毛は6月下旬に埋め, 2週間ごとに各々の畝から土中での状況を観察しながら掘り出した。風乾羊毛サンプル0.03gの引っ張り強度をデジタルフォースゲージで測定した。
土に埋める前の羊毛サンプルの引っ張り強度は, 毛刈り後3年経過した羊毛で24.8N, 2年経過した羊毛で28.2N, 毛刈り後2ヵ月の羊毛で34.1Nであった。土中から掘り出した三つの羊毛の引っ張り強度の平均値は, 2週間後では上段が17.8N, 下段が16.3Nとなり, 6週間後では上段が4.ON, 下段が0.4Nと非常に弱くなっていた。4~8週間後では畝の上段よりも下段において羊毛の引っ張り強度の低下が顕著に現れた。8週間後以降では羊毛を原形で掘り出すのが困難な状態になっており, 掘り出した羊毛は少し触ると抵抗なくちぎれる状態になっていた。
以上のように, 土中に埋めた羊毛は2ヵ月経過すると非常に脆くなることが示され, 畑などに埋めて還元処分しても3ヵ月も経過すればロータリー耕などの農作業に支障を与えないと考えられた。