日本泌尿器科学会雑誌
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原著
Maximal androgen blockade(MAB)後の再燃にエストロゲンを使用した前立腺癌の予後因子
中田 誠司宮澤 慶行佐々木 靖中野 勝也高橋 溥朋
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2010 年 101 巻 4 号 p. 597-602

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抄録

(目的) 進行前立腺癌は,一旦内分泌療法で制癌されても比較的早期に再燃して,予後不良であることが多い.MABにて一旦制癌された後にPSA再燃をきたして,エストロゲンを使用した前立腺癌の予後因子について検討した.
(対象と方法) 対象は,1992年1月から2008年12月の間に当院で診断された前立腺癌で,MABにより一旦10ng/ml未満に下降した後にPSA再燃をきたしてその後の治療でエストロゲンを使用した85例である.これらについて,診断時年齢,臨床病期,組織学的分化度,治療前PSA値,PSA nadir値,診断からエストロゲン開始までの期間,PSA再燃からエストロゲン開始までの期間,エストロゲン開始時のPSA値,エストロゲン開始前のPSA倍加時間(PSA-DT),エストロゲン開始から約3カ月後のPSA治療効果,治療初期のDES-P併用の有無,局所照射施行の有無,使用したエストロゲンの種類を調査し,予後との関係をKaplan-Meier法およびCoxの比例ハザードモデルを用いて検討した.
(結果) Kaplan-Meier法では,有意に予後不良因子であったものは,病期BとD,低分化腺癌,エストロゲン開始時のPSA値が11.9ng/ml以上,エストロゲン開始時のPSA-DTが2.3カ月未満,エストロゲン開始3カ月後のPSA値がCR以外であった.多変量解析では,予後に影響を与えた因子はエストロゲン開始3カ月後のPSA値,エストロゲン開始時のPSA-DTであった.
(結論) MAB後にPSA再燃をきたしてエストロゲンを使用した前立腺癌の予後因子について検討した.これらの結果は,その後の治療計画を立てたり,家族や本人に病状や今後の見通しを説明する上で有用である.

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© 2010 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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