日本泌尿器科学会雑誌
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原著
Ta膀胱癌における1973年WHO分類とWHO/ISUP分類を用いた臨床病理学的検討
石田 亮都築 豊徳吉田 真理塩田 隆子錦見 俊徳山田 浩史横井 圭介小林 弘明
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2010 年 101 巻 4 号 p. 609-614

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抄録

(目的) pTa膀胱癌症例における,1973年WHO分類とWHO/ISUP分類による悪性度評価の有用性を比較検討する.
(対象と方法) 当院にて診断された初発pTa膀胱癌症例132例(男性107例,女性25例,平均年齢69才)を対象とした.経過観察期間の中央値は67カ月であった.対象症例の1973年WHO分類による悪性度はG1が51例,G2が68例,G3が13例であった.膀胱癌診断時の病理標本を予後の情報なく,1名の泌尿器病理医によって,WHO/ISUP分類により悪性度を再評価した.進展は再発時pT1以上への進行と定義した.再発率,進展率の統計学的検討はKaplan-Meier法を使用して,群間の比較はlog rank testにて検定した.また多変量解析による予後因子の検討には,比例ハザードモデルを使用した.
(結果) 病理学的再検討の結果,WHO/ISUP分類ではlow grade77例,high grade55例であった.経過観察期間中に再発を68症例に認め,進展は14例に認められた.1973年WHO分類ではG1とG3の間で再発率の有意差が認められた(p=0.007).WHO/ISUP分類では,再発率及び進展率の両方で統計学的有意差が認められた(p=0.003,p=0.01).腫瘍数,後療法の有無で補正した後もlow grade,high gradeの間で再発リスク,進展リスクに有意差が見られた.(再発オッズ比2.0 95%信頼区間1.26~3.31,進展オッズ比5.6 95%信頼区間1.54~20.48).
(結語) Ta膀胱癌において,2004年WHO分類は,1973年WHO分類と比較して,予後を予測する因子として有用性が高いことが示唆された.

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© 2010 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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