日本泌尿器科学会雑誌
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原著
腹腔鏡下膀胱全摘除術の周術期成績 ―開腹手術との比較―
槙山 和秀中井川 昇村上 貴之林 成彦佐野 太河原 崇司関口 善吉窪田 吉信
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2010 年 101 巻 6 号 p. 721-725

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抄録

(目的) 腹腔鏡下膀胱全摘除術(LRC)は従来の開腹膀胱全摘除術(ORC)と比較し,周術期にメリットがあるか否か検討した.
(対象と方法) 横浜市立大学付属病院で膀胱全摘除術を施行した連続した22例を対象とした.2008年2月から2009年5月に施行したLRC 11例と,2006年10月から2009年4月に施行したORC 11例の周術期成績を比較した.
(結果) 平均手術時間はLRC 521分,ORC 428分で有意にLRCが長かった(p=0.00794).平均出血量はLRC 801ml,ORC 2,156mlでLRCが有意に少なかった(p=0.0014).術後食事開始日の平均はLRC 4.6日目,ORC 9.3日目で有意にLRCが早期に食事開始できた(p=0.0142).術後最大C反応性蛋白(CRP)の平均はLRC 10.8mg/dl,ORC 16.6mg/dlで有意にLRCが低かった(p=0.0124).合併症発生率はLRC 27%,ORC 45%で有意な差はなかった(p=0.375).平均郭清リンパ節数はLRC 10.9個,ORC 13.7個で有意な差はなかった(p=0.262).
(結論) LRCはORCに比べて,有意に手術時間は長いが,出血量は少なく,食事開始時期が早く,術後CRPのピークは低い.したがって,LRCはより低侵襲であり,術後早期にはメリットのある術式である.

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© 2010 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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