抄録
28歳,女性.多発性嚢胞腎(PKD)による慢性腎不全のため血液透析導入.著明に腫大した両腎を経皮的腎動脈塞栓術(renal TAE)にて十分に縮小させた後に,腹腔鏡下脾摘術とABO不適合生体腎移植を成功裏に施行しえた.従来の腎移植を予定したPKDの治療は,右嚢胞腎摘除により移植床を確保し,腎移植を行う方法が一般的であった.しかし将来的には腹膜透析を導入する可能性,また特にABO不適合腎移植の際には脾摘術を行う必要性等の問題があり,開腹術が回避可能なrenal TAEはメリットが大きいと考えられた.また腎移植後に左腎のrenal TAEを行うと移植腎の造影剤腎症が懸念されること等もあり,片側ではなく両側のrenal TAEを行い,腎移植に至ることが望ましいと考えられた.