抄録
(目的) 腎摘除術を施行された淡明型腎細胞癌患者において術前血清VEGF値と術後再発率との関連性を検討し,血中VEGF値が腎細胞癌の術後再発予測因子となりえるかを検討した. (対象と方法) 2001年8月から2010年5月に当院で手術を施行した転移のない淡明型腎細胞癌患者のうち,術前血清VEGF値を測定できた85例を対象にした.性別,年齢,ECOG PS, T分類,組織学的グレード,静脈浸潤,MSKCCリスク分類項目(Hb, LDH,補正Ca),CRPおよび血清VEGFにおける非再発生存率をKaplan-Meier法で算出しCox比例ハザードモデルによる単変量および多変量解析を行った.尚,血清VEGF値のカットオフ値はROC曲線により416 pg/mlと設定した. (結果) 9例(10.6%)に再発を認めた.単変量解析では血清VEGF値(p=0.0039)と組織学的グレード(p=0.0439),性別(p=0.0067),CRP(p=0.0236)が再発の有意な予測因子であった.多変量解析では,術前の血清VEGF値が有意な術後再発の予測因子であった. (結論) 術前の血清VEGF値が転移を有さない淡明型腎細胞癌の術後再発への予測因子となる可能性が示唆された.