2013 年 104 巻 1 号 p. 17-21
症例は58歳,男性.嘔気・左背部痛を主訴に他院を受診した.著明な貧血とCTで両側副腎部に出血を伴った腫瘍,及び左肺尖部にも腫瘤を認めたため当院に紹介された.右側血腫の増大に対し右副腎動脈塞栓術を施行したが,貧血は改善せず,出血コントロール,確定診断のため右副腎摘除術を施行した.術後貧血は改善し,病理組織学的診断では肺腺癌の副腎転移が強く疑われ,経気管支生検でも右副腎と同様の組織結果であったため,確定診断に至った.肺癌副腎転移による出血は非常に稀な病態であり,自験例が調べ得た限り国内外で26例目の報告である.致死的な病態であるが,副腎摘除術を施行することでその後の治療開始に伴い,予後を改善しえるのではないかと考えられた.