2013 年 104 巻 3 号 p. 525-529
症例は69歳の男性.2010年11月に左側腹部痛を主訴にかかりつけの消化器内科受診.上部消化管内視鏡検査では異常は指摘されなかったが,腹部エコーにて左後腹膜に腫瘍を指摘され当科紹介となった.CTにて左腎上極に接する形で10 cm大の後腹膜腫瘍を認め,腎周囲や腸腰筋に複数の転移性病変および大動脈周囲にリンパ節転移を認めた.副腎癌や悪性褐色細胞腫・悪性リンパ腫・肉腫を疑い,手術で根治性を求めるのは困難と判断し,まずは組織診断をつけるため12月に開放生検を施行した.腎下極の4.0 cm大の弾性硬で白色の腫瘍を摘出した.周囲との癒着はほとんど認めず容易に用手的に摘出可能であった.組織診断は後腹膜原発のGISTであり,GISTガイドラインにしたがい2011年1月からイマチニブ(グリベック®)400 mg/dayを開始した.しかしながらイマチニブの効果は不十分で病状は急速に進行し,2月に永眠された.後腹膜原発のGISTはまれな疾患であり,報告する.