抄録
症例は32歳,女性.二分脊椎による神経因性排尿障害および腎後性腎不全のため,11年前にインディアナパウチ造設術を施行されていた.その後,腎不全は緩徐に進行し,6カ月前から血液透析を導入されていた.今回母をドナーとした血液型適合生体腎移植を施行した.導入免疫抑制剤はタクロリムス(TAC)+ミコフェノール酸モフェチル(MMF)+メチルプレドニゾロン(MP)+バシリキシマブ(BLX)を用いた.インディアナパウチへの腸管の癒着から,インディアナパウチへの移植腎尿管吻合は難しいと予想されたが,癒着は軽度であり,インディアナパウチに移植腎尿管を吻合することが可能であった.シングルJステントおよびインディアナパウチ内にバルーンを留置し終了とした.術後は粘膜によるバルーンカテーテル閉塞予防の為にインディアナパウチの洗浄を連日行った.バルーン抜去後は自己導尿としたが,夜間は間欠式バルーンを留置している.術後1年経過しているが,有熱性尿路感染症や拒絶反応の発症はなく,良好な腎機能を維持している.インディアナパウチに移植尿管を吻合した症例の報告は過去になく,極めて貴重な経験であると考え報告する.