2016 年 107 巻 4 号 p. 261-265
症例は65歳男性.肉眼的血尿を認め近医受診しCTにて多発肺腫瘤,膵頭部腫瘤,骨硬化像を認め,血液検査でPSA著明高値であり当院消化器内科,泌尿器科に精査加療目的で紹介となった.当科受診時の直腸診では左葉中心に硬結を触知し,前立腺針生検で左葉よりGleason score 4+4=8の腺癌を認めた.造影CTでは多発肺腫瘤,膵頭部に造影効果の乏しい腫瘤を認め,骨シンチでは多発骨転移を認めた.膵MRIでは膵頭部に18mm大の腫瘤を認め腫瘤より末梢側の主膵管は拡張していた.膵腫瘤は原発性膵癌の他,転移性膵癌の可能性を考えた.前立腺癌の治療を優先し,膵頭部腫瘤に対する組織診断はビカルタミド・デガレリクスによるアンドロゲン遮断療法(ADT:androgen deprivation therapy)の効果をみて行うこととし,その間腹部超音波検査を2~4週間の頻度で行い膵頭部腫瘤を経過観察していたが,治療により膵頭部腫瘤は7mmに縮小し,膵頭部腫瘤は前立腺癌の膵転移と判断した.現在もADTを継続中である.