2017 年 108 巻 4 号 p. 225-228
脳静脈洞血栓症は稀な疾患であるが時として悪性腫瘍に合併する.精巣腫瘍に対してシスプラチンベースの化学療法を施行中に脳静脈洞血栓症を発症した2例を報告する.1例目は46歳男性で非セミノーマ,病期IIAに対しEP(エトポシド+シスプラチン)療法を導入した.3コース11日目に全身性痙攣が出現した.頭部単純CT,MRIで原因を特定できず対症的にフェニトインを使用した.体幹部造影CTで骨盤内静脈血栓を認め抗凝固療法を施行した.その後痙攣発作の再燃はなくEP療法を再開し計4コースを完遂した.痙攣出現時の頭部CT画像を後ろ向きに検証したところ上矢状洞に高吸収域を認め,痙攣の原因として脳静脈洞血栓症が強く疑われた.2例目は47歳男性でセミノーマ,病期IIIBに対しBEP(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)療法を導入した.2コース11日目に全身性痙攣が出現した.頭部CTで右頭頂葉にクモ膜下出血を認めた.CT静脈造影で上矢状洞内に造影欠損を認めた.MR静脈造影では同部位に狭窄を認めた.痙攣の原因は脳静脈洞血栓症と診断し抗凝固療法を開始した.血栓の縮小を確認した後,BEP療法を再開し計4コースを完遂した.