日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
MIBGシンチグラフィ陰性褐色細胞腫クリーゼの一例
勝又 有記髙井 優季黒本 暁人諸角 謙人星 宣次沼畑 健司笹野 公伸
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2019 年 110 巻 3 号 p. 206-210

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抄録

症例は48歳男性,2017年6月強い頭痛,血圧上昇を主訴に受診し高血圧クリーゼの診断で入院,ICU管理となる.単純CTにて右副腎にφ60 mm大の腫瘤を認めた.MIBGシンチグラフィは陰性であったが血液検査・蓄尿検査にてカテコラミンの異常高値を認め褐色細胞腫の診断となった.厳重な循環動態管理の上で大量補液・薬物加療を行い,循環血液量の是正および脈拍・血圧の安定化を行った後に,第15病日に手術を施行した.十分な術前管理の結果,術中は腫瘤の圧排による血圧変動は少なく,摘出後の血圧低下も軽度であり,術後昇圧剤は速やかに中止可能であった.本症例は病理の免疫染色においてMIBGシンチグラフィ陰性と関連するSDHB変異は否定的であった.病理学的にも褐色細胞腫の診断であったが全体に壊死組織が目立ち,広範な梗塞・壊死像を呈していた.本症例は亜急性の腫瘍虚血から広範な壊死を来し,なんらかのきっかけで壊死した腫瘍細胞から急激にカテコラミンが大量放出されクリーゼに至ったものと考えられた.また広範な壊死によってMIBGの取り込みが低下しシンチグラフィ陰性に至ったと推察された.

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© 2019 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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