日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
症例報告
同一腎に同時発生した粘液管状紡錘細胞癌と淡明細胞乳頭状腎細胞癌の1例
谷川 実央古内 徹田村 高越中島 史雄堂本 英治向井 清長嶋 洋治
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 111 巻 4 号 p. 134-139

詳細
抄録

腎細胞癌は腎の固形腫瘍では最も多く,成人の悪性腫瘍の2~3%を占める.しかし同一腎に異なる組織型の腎細胞癌が複数合併する例は稀で,組織型は淡明細胞癌および乳頭状腎細胞癌の報告が多い.今回我々は同一腎に共に極めて稀な組織型の腎細胞癌が発生した症例を経験した.症例は54歳男性.健康診断で右腎腫瘤を指摘され当院を受診した.Magnetic Resonance Imagingでは良性疾患の造影パターンを示したが,生検で腎細胞癌が疑われた.術前のComputed Tomographyでは先の腫瘍に近接して腎細胞癌を疑わせる15mm大の別の腫瘍が指摘され,両腫瘍を一塊として摘出した.病理診断はそれぞれ粘液管状紡錘細胞癌と淡明細胞乳頭状腎細胞癌であった.前者は2004年よりWHO分類に加わった組織型で本邦では自験例を含め確認しうる限りでは23例の報告を認めた.低異型度の立方細胞型及び紡錘型細胞をとる乳頭管状構造及び間質の豊富な粘液を特徴とし,予後良好とされるが,近年急速増悪する症例も報告されている.後者は2016年にWHO分類に記載された腎細胞癌で,透析関連腎腫瘍として考えられてきたが近年は通常人からの発生の報告もある.淡明な胞体と小型の立方状または低円柱状の腫瘍細胞が乳頭状,管状,充実性増殖を特徴とし,臨床的予後は良好である.これらの稀な組織型の組み合わせの腎細胞癌の同一腎発生例は報告がなく,若干の文献的考察と共に報告する.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top