2023 年 114 巻 2 号 p. 70-74
症例は76歳,女性.発熱,膀胱刺激症状で当科紹介受診となった.CTで膀胱左前壁に不均一な腫瘤性病変を認め,病変内部には線状の高吸収陰影を含んでいた.当初は尿膜管癌や軟部肉腫等の悪性腫瘍を疑ったが,過去のCTを確認すると,線状高吸収陰影が腸管内から膀胱周囲へと経時的に移動していたことが確認できた.異物による膿瘍形成等の良性疾患を考え,経尿道的に生検を行う方針とした.病理結果は膿瘍形成の所見であった.誤飲魚骨の迷入による膀胱周囲膿瘍と診断し,抗菌薬治療を行うことで病変は著明な縮小を認めた.悪性疾患との鑑別が困難であったが,画像検査による適切な診断により侵襲的な治療を回避できた.