日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
転移性腎癌に対するcytoreductive nephrectomy施行後の難治性リンパ漏に対してリンパ管塞栓術が有効であった1例
上原 昂一朗伊藤 悠城池田 舞子植村 公一蓼沼 知之伊藤 悠亮古目谷 暢村岡 研太郎蓮見 壽史槇山 和秀
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2023 年 114 巻 4 号 p. 133-136

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抄録

症例は57歳女性.発熱と血尿を主訴に前医を受診し,精査のCTで7.2cm大の左腎腫瘍を認め当科紹介となった.腎ダイナミックCTを撮像し,左腎癌肺転移(cT2aN0M1)IMDC分類Poor risk(Interval<1year,Hb;8.4g/dL,Ca;10.7mg/dL,Plt;74.2×104/mm3)の診断であった.肺転移巣が10mmと小さく単発であったこと,さらに血尿や発熱といった症状を呈していたことから,薬物療法前に腹腔鏡下左腎摘除術を施行.病理診断は淡明型腎細胞癌でpT3であった.術後4日から乳糜漏を認め,禁食や保存加療を行うも奏効せず,術後22日にヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルを用いたリンパ管塞栓術を施行.右鼠径リンパ節穿刺によるアプローチで左腎門部リンパ節からの造影剤の漏出を認めた.塞栓術後のCTで造影剤の漏出がないことを確認し,術後28日に食事再開,術後29日にドレーン抜去し,術後35日に退院となった.退院後のCTで肺転移の増大を認め,Ipilimumab/Nivolumab併用療法を施行.1コース施行後の評価で肺転移巣の増大を認めPD判定となり,2nd lineはCabozantinib単剤療法を施行している.リンパ管塞栓術は,保存加療で改善しないリンパ漏に対して安全で有効な手段となりうる.

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