2024 年 115 巻 3 号 p. 109-115
(目的)腎盂尿管癌患者において,術前水腎症の程度の術後膀胱内再発への影響を検討する.
(対象と方法)2010年1月から2022年3月までに腎盂尿管癌に対して当院で237例の腎尿管全摘術を施行した.膀胱癌の既往がある57例,術後抗癌剤膀胱内注入療法を施行した10例,および画像情報が十分でない1例を除いた169例を対象とした.術前CTでSociety for Fetal Urology(SFU)Grade 2(腎盂と数個の腎杯が観察される)以上の症例を水腎症ありと定義した.尿管腫瘍,術前自然尿細胞診陽性,多発上部尿路腫瘍,上部尿路腫瘍CISの4因子を選択して多変量解析を行った.
(結果)観察期間の中央値は43カ月で,46例(27%)に膀胱内再発を認めた.男性120例,女性49例,年齢の中央値は71歳であった.水腎症を83例(49%)で認め,Grade 4(腎盂・腎杯の拡張と腎実質の菲薄化を認める)は25例であった.膀胱内再発はSFU Gradeが進行するにつれて増加する傾向にあった.水腎症のない症例と比較すると,Grade 4の水腎症は既知のリスク因子で調整した多変量解析後も膀胱内再発において独立した関連因子であった(p=0.02,ハザード比 3.02,95%信頼区間 1.18~7.75).
(結論)術前にGrade 4の水腎症を認めた症例は膀胱内再発をきたしやすく,術後抗癌剤膀胱内注入療法や,頻回の膀胱鏡検査を検討する必要がある.