日本泌尿器科學會雑誌
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特発性男子不妊症における精巣組織の組織花学的研究
第1報 複合糖質 (特に酸性ムコ多糖類を中心に)
欄 芳郎三宅 弘治三矢 英輔
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1980 年 71 巻 11 号 p. 1255-1270

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抄録

今回われわれは無精子症および乏精子症と診断された特発性男子不妊症23例と, 停留精巣, 類宦官症, 先天性両側精管欠損症, 精管結紮後の無精子症の各4例と, 各疾患手術時に生検して得た6例の正常精巣の計33例の精巣組織を用いて研究した. 生検は Charny の方法により実施し, 採取された組織は以下の3方法により固定した. 1) カルノア液 (室温で2時間) 2) 1%塩化セチルピリジン (CPC) を含むカルノア液 (室温て2時間) 3)53℃2時間尿素―CPCて処理後, 1%CPCを含むカルノア液 (室温で2時間). 以上3種の固定液て固定後, パラフィン包埋しヘマトキシリンーエオジン染色および, 以下の組織化学的方法を実施した. 1) アルシアン青 (AB) 染色 (pH 1.0). 2) アルシアン青 (AB) 染色 (pH 2.5). 3) 透析鉄フェロシアニド (D1-FCY) 法. 4) Periodic acid-Schiff (PAS) 法, そしておのおのの中性, 酸性ムコ多糖の同定を目的とし, 組織化学的染色の前にご以下のような酵素にこて処理し染色した. 酵素消化法. a) シアリダーゼ〔AB (pH 2.5)染色前に〕. b) 放線菌ビアルロニダーゼ〔AB (pH 2.5)染色前に〕. c)睾丸ビアルロニダービ〔AB (pH 1.0, 2.5)染色前に〕. d) コンドロイチナーゼABC〔AB (pH 1.0, 2.5)染色前に〕. e) コンドロイチナーゼAC〔AB (pH 1.0, 2.5) 染色前に〕. f) α-アミラーゼ (PAS染色前に) 以上の酵素消化法の実施にこより以下のような結果を得た. 1) 正常および特発性男子不妊症の精巣において精細管壁, 間質には酸性ムコ多糖が存在する. 2) AB pH 1.0および2.5染色とコンドロイチナーゼABCおよびAC消化法の結果より, 正常および特発性男子不妊症精巣の精細管壁には, コンドロイチン硫酸A, Cが存在した. 3) そして, 間質にはコンドロイチン硫酸Bが存在した. 4) α-アミラーゼ消化法を併用したPAS染色の結果より, 正常精巣の精上皮, セルトリ細胞よりも特発性男子不妊症のそれらにこより多くのグリコゲンが存在した.

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