日本泌尿器科學會雑誌
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慢性前立腺炎様症候群 (prostatosis) の研究
I. 泌尿器科学的・精神医学的分析
井澤 明
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1980 年 71 巻 9 号 p. 1055-1065

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抄録

慢性細菌性前立腺炎様の症状を呈しながら起因菌の証明されない病態を Meares は prostatosis と呼んだが, その本態は現在まで解明されていない. 今回の調査によりこの病態は慶応義塾大学病院泌尿器科外来受診患者の5.5%, 一応慢性前立腺炎として取り扱われていた患考の85.8%を占めていた.
著者はこの prostatosis に対し身体的および精神的両面より調査を行つたところ, 心理的要因の関与の高い考が95.5%と高率に見られた. さらにこれらの症例は, おのおのその精神的状況に共通な特徴を有する神経症群, 心身症群, 老年期群に分類できることが明らかとなつた. 老年期群は老人一般に共通する問題に悩まされている群である. 神経症群の症状は神経症の一部分症状としてとらえるべきもので, その治療は精神科医により行われるべきである. 心身症群における慢性前立腺炎様の症状の固定化に関しては泌尿器科医による医原性の要因の関与が考えられるとともに, その治療の面では, 身体的な疾患であるという観念の強い患考と信頼的医師-患考関係を保ち易いという点より, 泌尿器科医によりこれを行うべきである. したがつて今後心身症群の実態の解明およびその治療に関して, 泌尿器科医の積極的取り組みが必要と考える.

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