日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
前立腺癌の疫学的研究
第1報 面接法による前立腺癌高危険度群の検討
三品 輝男渡辺 泱荒木 博孝都田 慶一藤原 光文小林 徳朗前川 幹雄
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 72 巻 10 号 p. 1256-1279

詳細
抄録

前立腺癌の高危険度群を知る目的で, 学歴, 職業, 収入, 信仰, 結婚状況, 性生活, 食生活, 身体状況, 既往歴および家族歴を重点調査目標とする111項目よりなる独自の前立腺癌疫学調査用質問用紙を作製し, インタビュー方式により, 前立腺癌100例と, それらの症例に年齢と現住所を一致させた正常対照者100例とを対象に, matched pair analysis による case-control study を行つた. その結果, 前立腺癌群において正常対照群よりリスクが高いと考えられたのは, 次の諸点であつた (危険率10%以内のものにはアンダーラインを付さず, 危険率5%以内のものにはアンダーラインを付した).
1) 職業については管理的職業に従事せず, 軍隊歴がなく, 染料を取り扱つたことがある. 2) 収入については, むしろ低い. 3) 結婚状況については, 早婚で, 結婚継続年数が長い. 4)性生活については, 最初の性交年齢が若く, 青壮年期の性交回数は多いが, 老年期に入ると性交回数が少なく, 性活動停止時期も早い.
5) 食生活については, 魚介類はあまり摂らぬ西欧型の食事内容で, 緑黄色野菜の摂取が少なく, 香辛料や塩つぱいものを好む. アルコール, 喫煙はあまり関係がない. 6) 既往歴としては, 前立腺肥大症およびロイマの既往あり. 7) 学歴, 信仰, 身体状況および家族歴には特記すべきものはなかつた.
すなわち前立腺癌の高危険度群は, 特に性生活と食生活に特異なパターンを有する人達であることが明らかになつた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top