日本泌尿器科學會雑誌
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特発性上部尿路出血の成因に関する臨床的ならびに実験的研究
X線学的立場からみた上部尿路静脈系のうっ滞と血尿との関連について
中村 健治山田 龍作
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1981 年 72 巻 5 号 p. 530-543

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抄録

特発性上部尿路出血の病因を検解明するため, 特発性上部尿路出血患者に対し血管造影によるX線学的検討を行ない, その成績に基づき動物実験を行ない, 興味ある成績をえたので報告する.
対象は特発性上部尿路出血患者133例で, 動脈造影では, 9%のみに異常を認めたにすぎなかつたが, 静脈造影では52%の高頻度に異常を認めた. 静脈造影で異常の認められた例のX線像を詳細に検討し次の6型に分類した. 第1型; 側副血行路形成型, 第2型; 腎静脈狭窄型, 第3型; 腎盂尿管静脈瘤, 第4型; 腎静脈血栓症, 第5型; 腎静脈系の先天異常, 第6型; その他の6型でこの中で注目すべきことは第1型から第4型の38例, 78%の症例はいずれも上部尿路静脈系うっ滞の存在を示す異常であったことである. 以上の成績から上部尿路静脈系うつ滞が特発性上部尿路出血の成因に重要な役割を果すもので, その臨床的検索には腎静脈造影が極めて有用であるとの結論をえた.
次にこの臨床的考察を裏付けるため, 実験的に腎静脈閉塞および狭窄を作製し, 血尿との関連につき検討した. 腎静脈圧が30mmHg以上のうつ滞を示した全例に血尿の出現をみ, 腎静脈圧上昇および下降と尿中赤血球数とは比例の関係にあり, 圧下降に伴ない血尿の消失する例を観察した.
以上の成績から特発性上部尿路出血の原因のすべてを上部尿路静脈うつ滞に帰せずとも多くの例で密接に関連するとの結論をえた.

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