日本泌尿器科學會雑誌
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尿路結石の発生原因に関する検討 (第2報)
正常女性における性周期が尿中クエン酸および電解質排泄量に及ぼす影響について
井口 正典片岡 喜代徳郡 健二郎八竹 直栗田 孝
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1981 年 72 巻 7 号 p. 856-864

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抄録

尿路結石症の発生原因を究明するための一環として尿中クエン酸排泄量を検討するにあたり, まずその基礎的検討として, 女性性周期が尿中クエン酸ならびに電解質排泄量に及ぼす影響を検討した. 対象は正常性周期を持つ未婚の20歳健康成熟期女性29名で, 約1カ月間に定期的に8回早朝尿を採取し, 尿中エストロゲン, クエン酸, Ca, Mg, P, Na, K, Cl, 尿酸を測定し, クレアチニンで補正し比較検討した. また個々の性周期にあわせて, 月経開始前 (第I期), 月経終了前後 (第II期), 排卵期 (第III期), 第III期と次の第I期の中間 (第IV期) の4時期に一致する検体を選び, 時期を一致させた上で女性性周期が各因子に及ぼす影響を検討した. その結果, クエン酸排泄量は時期を無視した場合, 平均309.5±161.5mg/g・creatinine であつたが, 性周期を考慮すると, 第II期で最低値 (245.7mg/g・creatinine) をしめし, また第IV期で最高値 (363.0mg/g・creatinine) をとり, 時期により有意な変動を認めた (p<0.05). 以上の結果は, 尿中クエン酸排泄量の検討にあたつては, 女性性周期を十分考慮する必要があることを示唆していると考えられた. また各時期で各因子間の相関を比較してみたところ, 第III期には他の時期で相関のみられた多くの因子間の相関がくずれるという結果を得た. すなわち女性ホルモンの排卵期における急激な変動が, 尿中排泄物質に及ぼす影響は予想以上に大きいことが判明した.

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