日本泌尿器科學會雑誌
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超音波ドプラ法による移植腎血行動態に関する研究
IV. 無尿期血流について
有馬 正明宇都宮 正登市川 靖二井原 英有石橋 道男佐川 史郎高羽 津園田 孝夫
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1982 年 73 巻 5 号 p. 629-635

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抄録

死体腎移植直後の急性腎不全期および生体腎移植後の無尿症例に対し, 超音波ドプラ法による移植腎血行動態の検索を施行し, 血流パターンの推移から, 移植腎の予後, 移移腎機能の発現時期, 無尿期の拒絶反応の診断を行なつた.
対象は, いづれも1回以上の術後血液透析を必要とした5例の生体腎移植, 3例の死体腎移植患者である, 生体腎移植5例中4例は拒絶反応後長期に亘る透析後, 機能の回復を見た症例であり, 残り1例と死体腎移植3例は術後急性腎不全により透析が必要であつた症例である.
急性腎不全による無尿期においては, 血流状態は一般に低下しており, 血流パターン上収縮期相には著変はないが拡張期相では重症度に対応した血流速の低下が認められた. また拡張期相の血流の改善状態から, 腎機能回復, 発現の時期が予知し得た.
拒絶反応における無尿期において, 血流状態から拒絶反応の進行度が診断でき, 拒絶反応からの可逆性, 非可逆性が診断できた.
本法は検査法の極めて制限される無尿状態で, 移植腎の病態を把握するのに有効な検査法である.

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